──経営、特にディープテック企業を経営される長い旅路の中で、モチベーションを維持する点で何か工夫されていることはありますか?
「新しい医療を作る」という思いは研究者を志したときも起業した時も全く同じです。新しい医療を社会に普及させるところには未だ至っていませんので、全くやりきった感はありませんし、これからがスタートだと思っています。
こうやって自分を俯瞰すると、長く継続するためにはやはり自分が心から思い続けられるビジョンが重要なのだと思います。
あとは私個人の人生観として、「死ぬ時にこれはやったと思って死にたい」というのがあります。
私は次世代にきちんと医療のバトンタッチをすること、いつか破綻すると言われている皆保険制度に代替する手段にチャレンジして、持続可能な医療として次の世代に渡すことに貢献すること。これをやりきってから棺桶に入りたいのです(笑)。
──まさに死生観のような部分だと思います。なにか原体験がおありだったのでしょうか?
医者の良いことの一つは「死が間近」にあるということです。
今の社会は死ぬことを前提に置かないような雰囲気があります。そういった考えは全部病院に追いやって、誰もが明日普通に生きられる前提で物事が動いている。
でも死ぬことを念頭に置くと、物事の優先順位は自然と定まります。社内のメンバーには「月曜の朝から死生観のことを語っている」とよく揶揄されていますが(笑)。
今の医療は先人が開発してくれたもので、誰かが今の医療をもう一歩前に進めないと将来の医療は前進しません。
まだまだ燃え尽きるような段階では無いですし、やるべきことは山積みだと思っています。