グーグルが医療機関のデータ分析を支援する「AIツール」を発表

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グーグルは10月4日、医療機関向けの新たな人工知能(AI)ツール群「Medical Imaging Suite」を発表した。このツールは、グーグルのソフトウェアとサーバーを使用してX線やMRIなどの医療画像を読み取り、保存し、ラベル付けを行うためのものだ。

Medical Imaging Suiteを使えば、病院や医療機関は画像のメタデータを検索したり、素早く分析することが可能になる。さらに、医療画像の自動注釈付けや、研究用の機械学習モデルの構築が行える。

グーグルクラウドのヘルステック戦略・ソリューション担当のアリッサ・リンチ(Alissa Hsu Lynch)は、「我々は、AIがより速くより正確な診断を可能にし、医療従事者の生産性の向上につながると考えている」と述べている。

しかし、グーグルのヘルスケア分野への進出は、プライバシー擁護派の懸念を引き起こしそうだ。グーグルは、2570億ドル(約3.7兆円)の年間収益の大部分を個人データに基づく広告から得ており、患者のデータが広告に利用されることが懸念されている。

リンチによると、グーグルは患者の保護された健康情報には一切アクセスせず、このサービスのデータが広告事業に使われることはないという。このサービスは、電子化した医療情報に関するプライバシー保護・セキュリティ確保について定めた法律のHIPAAに準拠している。

このツールの初期のパートナーの1社のHologicは、グーグルのクラウドストレージを利用し、子宮頸がん診断の改善に役立つ技術を開発している。また、ニュージャージー州の医療機関ネットワークHackensack Meridian Healthは、数百万GBのX線写真から個人を特定するデータを除去するためにこのツールを使用している。同社はまた、前立腺がんの転移を予測するアルゴリズムの構築にもこのソフトウェアを使用する予定だ。

過去の失敗


グーグルは過去に、ヘルスケアへの取り組みで論争を巻き起こしており、2019年には「プロジェクト・ナイチンゲール」と呼ばれる取り組みが批判を浴びた。このプロジェクトで同社は、全米第2位の医療システムであるアセンションと提携したが、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)はグーグルが大量の個人の医療データに不正にアクセスしていると非難していた。

グーグルはまた、米国立衛生研究所(NIH)と共同で、人間の胸部X線写真10万枚以上を一般に公開したプロジェクトでも批判を浴びた。ワシントン・ポストの報道によると、NIHは、画像が掲載される直前に、同社のソフトウェアがX線写真から患者を特定できるデータを適切に削除しておらず、連邦法に違反する可能性があるとグーグルに告げたという。これを受けて、グーグルはNIHとのプロジェクトを中止した。

今回のプロジェクトに参加するHackensack Meridian Healthの分析責任者のサミア・セティ(Sameer Sethi)は、同社はこのような事故を防ぐための安全策を講じていると述べている。

「ツールそのものを信用してはいけない」と彼は述べ、彼らは画像が非識別化されていることを証明するために、外部の企業と連携していると付け加えた。「我々は、専門家の許可を受けずにデータを使用したりはしない」とセティは述べた。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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