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2022.09.07

ユーグレナ出雲充が語る、起業家に求められる「H・E・R・O」とは #1

ユーグレナ 出雲充

バングラデシュで目の当たりにした栄養問題に苦しむ子どもたちを救うことを決意し、2005年にユーグレナを立ち上げた出雲充(いずもみつる)社長。世界で初めて微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)の食用屋外大量培養を成功させた同社は2012年に上場を果たした。

ユーグレナ、クロレラなどを活用した食品や化粧品、バイオ燃料への活用などに事業の幅を急拡大させている同社の出雲氏が考える、起業家の素養、事業立ち上げの秘訣とは。DIMENSIONビジネスプロデューサーの下平将人が聞いた(全3話中1話)


「まず動け、自分の居場所から飛び出せ」


──はじめに、起業された経緯についてお聞かせください。

一番起業に直結した原体験は、大学1年生の夏、生まれて初めて海外、バングラデシュに行ったことです。バングラデシュで見た子どもたちが栄養問題で苦しんでいる姿があまりに衝撃的で、それをなんとかしたいという一心で起業しました。

人は日常と完全に切り離された場所に行くと、必ず感動や苦しみ、恥ずかしさを味わうものです。そういう非日常体験が起業の原体験に繋がっていくのだと思います。

この話をすると、よく「自分もバングラデシュに行きます!」と勘違いされてしまったりするのですが(笑)、別に海外じゃなくて身近な場所でも良いんです。とにかく「普段自分がいる居心地の良い場所を飛び出す」こと。それが原体験につながるのだと思います。

──同じ体験をしても「自分の人生にとって重要な目的」と捉えられる人は希少だと思いますが、なぜ出雲さんはそれを自分事化できたのでしょうか。

本当に良い質問です。そして、それは答えの無い問いでもあります。

起業家というものは「まずやってみる」「まず口に出してみる」人。そこからすべてが始まります。私も学生時代にバングラデシュに行った際には、栄養に関して特別な知識があったわけではありませんでした。ただただショックで、絶対におかしいと思った。そこから必ず日本で一番栄養価の高いものを見つけてバングラデシュに持って行こうと決め、色んな人に話を聞き、めちゃくちゃ勉強もしました。

そうやってまず動き、いろんな人に相談しているうちに、だんだんと自分の夢や目標を描けるようになっていきました。目標が綺麗になってからじゃないと誰かに言っちゃいけない、なんてルールは無いのです。

「悔しい」「おかしい」「楽しい」「ワクワクする」といった気持ちに素直になり、「まずやってみる」ことが大切だと思います。

──栄養価の高いもの、となるとさまざまな解決策があると思うのですが、なぜ「ユーグレナ」に定められたのでしょうか?

深掘りして、研究して、合理的に「ユーグレナだ!」という答えに着地したと思いますか?(笑)

そんなことは普通に考えればありえません。私ですら、ユーグレナ以外にもさまざまな選択肢を理解してはいました。ただ直感的に、「バングラデシュにユーグレナの給食を持って行ったら子どもたちが間違いなく喜んでくれる」と確信できた。だからユーグレナをやろうと決めたのであって「他の手段に比べて市場ポテンシャルがあるから」といった論拠で決めたわけではありません。

「ユーグレナを持っていけば、栄養問題に苦しむ子どもたちが元気になる」。この夢をどうやったら形にできるかを考え続けて、いまも会社を続けています。
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文=下平将人 提供元=DIMENSION NOTE by DIMENSION, Inc. 編集=露原直人

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