もちろん僕にとっても、この業界に初めて足を踏み入れたときから特別な存在だった。朝や昼のレギュラー番組を担当していたときには特に、プロデューサーやディレクターも含めて、女性アナにはいろんな差し入れやプレゼントをしていた。
そう、彼女たちは「お姫さま」なのである。なぜか?それは特別な存在だからである。世界を見渡しても、アナウンサーがニュース原稿を読んで、更にバラエティ番組の司会までしている国はめずらしい。
日本では、男子アナとは呼ばないのに、女子アナと呼ぶ文化も残っている。これは一種の差別なのだろう。わかってはいるが、思わず呼んでしまう。加えてルッキズム(人を外見のみで判断すること)はやめようという時代の流れもあって、批判を浴びることもしばしばある。
アナウンサーはその大半がテレビ局の社員だ。最近は番組制作費のコストダウンからか、社員アナウンサーの活用が目立っている。社員は何回使っても給与がほぼ変わらないためであろう。
一方でフリーランスのアナウンサーは、バラエティで活用される傾向がある。それはひとえに経験が豊富で「うまい」からだ。バラエティ番組は編集をする前提で撮影するため、拘束時間が長く、社内でいい人材を育てにくいという事情もある。
特殊の例もあり、元TBSアナウンサーの田中みな実さんは、司会業はもちろん、女優業から写真集発売、女性用下着のプロデュースまで手掛け、幅広い活躍をしている。そう、今や何でもありの時代になったのである。
一体「女子アナ」とは何なのだろうか。
テレビ局の内実がリアルに、かつ大胆に描かれる
先日、仕事で付き合いのある元日本テレビプロデューサーの吉川圭三氏が新しく小説『全力でアナウンサーしています』(文藝春秋)を執筆したので早速直撃した。
小説『全力でアナウンサーしています』の著者で元日本テレビの吉川圭三
吉川氏は現在、KADOKAWAでコンテンツプロデューサーを、dwangoの営業本部でエグゼクティブプロデューサーを兼任している。
これまでにも数多くのテレビ局や芸能界を舞台にした小説を執筆してきた吉川氏が、今回アナウンサーを題材に選んだ理由は何なのだろうか?