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2022.12.05 08:00

誰が「女子アナ」を潰すのか? 元日テレ、吉川圭三に聞く

Getty Images


そのひとつに、やはりアナウンサーの特異性があるという。アナウンサーは、報道からバラエティー、ワイドショーなどの広いジャンルをカバーする。つまり“会社員“であるのに“タレント未満“であるので、プライバシーもなく、スクープから身を守ってくれるマネージャーもいない。
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そして特に女性アナウンサーは、婚約・結婚・出産など徹底的にプライバシーを暴かれるリスクもある。おまけに「アナウンサー30歳限界説」という言葉もある通り、途中でキャリアを捨てて営業やネットワーク局などに異動させられるケースも多い。

「アナウンサーは、8000人から2人、という高い採用倍率を潜り抜けてきています。近頃は見た目重視で選ばれ、容姿が衰えると番組降板もある。僕はアナウンス部長を8カ月だけやりましたが、このような世界をテレビ局で見てきたことがあり、(主に女性)アナウンサーを題材にして小説を書こうと思いました」

本作では、「30歳限界説」「アイドル化」「結婚」「産後うつ」など、女性アナウンサーを取り巻くテレビ局の内実がリアルに、かつ大胆に描かれており、なかなかの衝撃作になっている。
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ある女性スターアナウンサーに「不倫疑惑」が浮上し、同僚たちにも、次々とスキャンダルが降りかかる。彼女たちを「引きずり降ろそう」とするテレビ局の闇の勢力、そして、ジェンダー問題に真摯に取り組むアナウンス部長らが立ち向かう──といった物語である。

ちなみに、本作のアイデアは8年前からあった。

「2014年に文春文庫から『ヒット番組に必要なことはすべて映画から学んだ』を出版したときに、文春の文庫局長に『テレビ局を舞台にした小説でも』と提案され、女子アナ小説を書こうとした。しかし何か、スキッとしたプロットが無かったんです」

その後、2020年1月に明石家さんまさんの別荘に行った時に「ドラマ『ER:緊急救命室』のように群像劇にすれば書ける」と思いついたそうだ。

本当にあった話も含まれている?


筆者も放送業界に身を置く者だが、ここまで業界やテレビ局の内側を描いた作品はほぼない。皆無と言ってもいいだろう。

本作にはアナウンサーを潰そうとする勢力が登場するのだが、実際にこれに似た話は幾度も聞いたことがある。また、先輩アナウンサーによる“後輩いじめ”的な問題も、実際にあることは否めない。筆者も実際に、指導といえば指導だし、いじめといえばいじめ?といった場面を見たことがある。

とはいえ守ってくれる事務所やマネージャーがいないので、 “個”で戦ってゆくしかない。この作品には、そんなアナウンサーの奮闘記が描かれている。
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文=野呂エイシロウ

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