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2022.12.04 10:00

性別違和の若者は、自殺未遂や自傷行為で入院する傾向が強い

Getty Images


研究チームによると、今回の分析手法では、トランスジェンダーとノンバイナリーを特定するときに困難があったため、研究結果にひずみが生じた可能性があるという。トランスジェンダーとノンバイナリーを特定する際の基準として、性別違和という診断を受けているか否かを使う方法は完全ではない、と研究チームは指摘している。なぜなら、トランスジェンダーとノンバイナリーの若者がすべて、違和感(ディスフォリア)を覚えるわけではないからだ。また、たとえ本人が違和感を覚えていても、そのすべてが性別違和と正式に診断されるわけでもない。
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性別違和と診断される若者の割合は近年増えており、2016年は0.16%、2019年は0.48%にのぼった。とはいえ、これらの割合は少ないものであり、人口層によって著しい差がある。その点について研究チームは、ジェンダー・アファーミング・ケアにアクセスできるチャンスの格差や、差別の増加が反映されているとしている。

たとえば、黒人、ヒスパニック系、ラテンアメリカ系などの少数派民族・人種に属する若者は、性別違和の診断を受けることはあまりない。同じことは、困窮世帯や米南部在住者、地方病院の利用者にも当てはまる。しかしながら、今回の研究結果は、トランスジェンダーとノンバイナリーの自殺願望に関する既存研究と一致しており、地域や州レベルの文化ならびに健康関連の政策による影響を浮き彫りにしていると、研究チームは述べている。

研究チームによれば今回の研究は、全米データベースを用いてこの問題を考察した初の試みだ。また、米国で暮らす若者へのジェンダー・アファーミング・ケアに対する風当たりがますます強くなる時期に行われた研究でもある。多くの州は、若者がジェンダー・アファーミング・ケアを受けられる機会を縮小する方向に動いており、全米各地でこの問題が政治的な火種と化している。
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トランスジェンダーとノンバイナリーの若者は、メンタルヘルス問題を抱える割合が高く、とりわけ有色人種の状況が深刻だという明らかな証拠は、何度も示されている。主要な医学界はほぼ例外なく、ジェンダー・アファーミング・ケアを禁止しようとする取り組みを危険で残酷で非科学的だとして認めていない。

特に議論を呼んでいるのが、二次性徴抑制剤だ。人生が一変するほどの治療法であると同時に、長期的に使用した場合の影響に関するエビデンスは比較的乏しい。しかし、何の治療も行わないことにも犠牲が伴い、介入することでトランスジェンダーとノンバイナリーがメリットを得られることは、数多く実証されている。

なお、研究チームは、性別違和と診断される若者が、検証対象期間を通じて増加しているからといって、必ずしも性別違和を覚える若者が増加しているとは限らないと指摘している。診断数が増えているのはむしろ、社会が多種多様なジェンダー・アイデンティティを受け入れ始めていることと、ジェンダー・アファーミング・ケアとメンタルヘルス向けサービスを利用しやすくなっていることを示唆する可能性が高いという。

forbes.com 原文

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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