今回の研究では、2016年から2019年までの全米データベースを活用し、6歳から20歳までの年齢層が、何らかの理由で入院したケース200万件以上を検証した。そして、性別違和と診断されたトランスジェンダーとノンバイナリーの患者を特定した。性別違和とは、心と体の性別が一致せず、違和感を覚える状態を指す。
分析の結果、性別違和と診断を受けたトランスジェンダーとノンバイナリーの若者は、そうした診断を受けていない人と比較すると、自殺未遂や自傷行為によって入院する傾向が4倍から5倍強かったことがわかった。
2016年から2019年の、どの1年間をとっても、性別違和と診断された若い入院患者の自殺願望率は、性別違和と診断されてはいない若い入院患者と比べて著しく高い。具体的にみると、2016年は前者が36%で後者が5%、2019年は前者が55%で後者が4%だった。
同様に、自傷行為に及んだ割合も、性別違和と診断されている若い入院患者のほうが高い。2016年は前者が13%で後者が1%、2019年は前者が15%で後者が1%だった。
研究論文の共同著者の1人で、米フィラデルフィア小児病院の医師ナディル・ヤヒア(Nadir Yehya)は、自殺未遂と自傷行為は「トランスジェンダーやノンバイナリーの若者で、より多く見られる」という既存のエビデンスが、この研究で確認されたと述べた。
ヤヒアはさらに、こうした弱い立場に立たされた人々を守るために、医療機関は差別を減らす努力をすべきだと述べている。たとえば、患者が希望する名前や代名詞を使用したり、ジェンダー・アファーミング・ケア(自認するジェンダーに適合した治療)を提供したり、自傷行為を対象とした医療サービスを継続的に提供したりするといったことだ。