カマラ・ハリス米副大統領が今週フィリピンの紛争中の島を訪問したことは、おそらく有益ではない。中国を突つき、見返りはほとんどない。フィリピンのフェルディナンド・マルコス・ジュニア大統領も前任のロドリゴ・ドゥテルテも中国問題には無縁だ。
それでも、バイデンの綱渡りの外交は彼に巧みに操る余地を残している。バイデンはトランプよりはるかに中国に厳しいが、最近インドネシア・バリ島で習近平と行った会談は中米関係をタイムリーに再起動させるものだった。
香港の投資調査会社Gavekal Research(ガベカルリサーチ)のエコノミストであるダン・ワンは「米中関係の悪循環がひと段落した」証拠だと見ている。ワンによると、G20会議の傍らで行われた今回の首脳会談のトーンは建設的で、おそらくかなり低かった期待を裏切るものだったという。
元米財務長官のローレンス・サマーズも同意見だ。現在ハーバード大学で教えているサマーズは米通信社Bloomberg(ブルームバーグ)に、経済協力における「建設的な動き」と思われるものを見て「勇気づけられた」と語っている。つまり、バイデンの任期の後半にはここ数年の動きのハッピーエンドに近いものが得られる余地があるということだ。
サマーズは「もし我々が自国を立て直すことから中国を引きずり下ろすことに焦点を変えるなら、非常に危険で非常に残念な選択をすることになると思う」と付け加えている。
良いニュースは、バイデンが前任者よりも米国の立て直しにより注力していることだ。その一例が、米国のハイテク産業を活性化させ、生産性を高めるための研究開発への3000億ドル(約41兆円)の投資だ。バイデンのいわゆる「インフレ抑制法」は、クリーンエネルギーの革新に勢いを与えている。
確かに、米国のアニマルスピリッツ(野心的な意欲)を盛り上げるバイデンの取り組みは始まったばかりだ。しかしそれは、習近平が見せかけのための無駄な努力ではなく、自国の経済力を再構築を図る米政権と対峙していることを意味している。
(forbes.com 原文)