インフレの定義
インフレとは、簡単に言えば物価が上がることだ。しかし、なぜ物価が上昇するのか、その理由を考えなければ実際のところよくわからない。ここで、2つの見方がある。1つは、さまざまな構成要素(主要なものはエネルギー、食料、モノ、サービスなど)の価格上昇を見て、その変化からインフレを理解する方法だ。例えば最近、エネルギーと食料の価格が上がり、インフレ率が急上昇した。この見方は有用で不可欠な手法だが、完全なものではない。というのも、起きたことを示すものであり、なぜ起きたかは明示しないからだ。
インフレを理解する第2の方法は、インフレを発生させる条件に注目することだ。これはマネタリストの視点であり、金利と通貨供給量に焦点を当てている。よく耳にするのは、米経済学者ミルトン・フリードマンの「インフレは常に、どこで起きてもマネタリー現象である」という言葉だ。このアプローチも有用で不可欠なものだが、完全ではない。なぜインフレが起こるのか教えてはくれるが、正確に何が起こったのかを教えてはくれない。
インフレを引き起こす3つの要因
インフレには3つの要因があると筆者は主張したい。供給の変動、需要の変動、貨幣の変動だ。こうした要因があればあるほど、過去数十年インフレ率は高くなった。そのような視点で見ていくと、過去の説明がつくだけでなく、2つの説明を理論的に結びつけることで近年何が起こっているのかを理解することができる。最も重要なのは、どこへ向かっているのかを確認するのに使えるということだ。
では、この2年間でこの3つの要素はどう変化したか。新型コロナウイルス感染症のパンデミック後、3つのインフレ要因すべてがそろった。新型コロナを受けての景気刺激策により需要は増加した。供給はサプライチェーンの問題で減少していた。そして、実質金利がゼロもしくはマイナスだったため、金は手軽に借りられた。3つの要因がすべてそろい、爆発的なインフレが起きたのは不思議ではなかった。
状況はどのように変化したのか
今、状況は再び変化している。雇用が好調なため需要はかなり高い水準にあるが、景気刺激策で支給された金は使われ、実質賃金の伸びはマイナスとなり、半年前の水準から低下している。サプライチェーンのひっ迫もほぼ和らぎ、エネルギーや商品コストの高騰さえも落ち着いてきている。最後に、金利は急上昇し、その影響はすでに住宅市場に現れている。3つのインフレ要因は今や需要1つに絞られた。これは大きな変化だ。もしこの理論が正しいのであればどうなるか。インフレ率は下がるはずだ。
インフレはピークに達した
インフレを起こす各要素は予想通りの動きを続けている。今後、インフレ率は下がり続け、おそらく来年、2023年末には3〜4%になることが見込まれる。
差し当たって、重要なのは米国のインフレはピークに達し、経済と市場に多くのプラスの影響を与えるということだ。
(forbes.com 原文)