しかし、バイデン大統領の明らかな実績の1つは中国が前米大統領のドナルド・トランプを恋しがっているに違いないということだ。
中国の指導者である習近平国家主席は、決して公にはそのことを認めないだろう。しかし、バイデンの巧みな方向転換によってアジア最大の経済大国である中国は以前より厳しい状況に直面していることは間違いないはずだ。トランプは早くから頻繁に中国に対して強気な発言をしてきた。しかし、トランプの実際の政策は往々にして、スムーズに経済成長を続ける中国に卵を投げつけるというネタバレ満載の茶番のように見えた。
トランプの貿易戦争は見出しを飾るような大きな混乱を引き起こしたのだろうか。もちろん、そうだ。ホワイトハウスが中国脅威論者で『Death by China』の著者であるピーター・ナバロを通商部門で起用したことで、習近平の怒りを買っただろうか。間違いなくそうだ。トランプが中国からの輸入品に課税したことで輸出企業に混乱が生じ、中国共産党を狼狽させただろうか。確かにそうだ。
しかし中国を煽り、荒らしてきたトランプの4年間で中国政府の路線や行動、習近平の大局的な野望は変わっただろうか。こじつけの逆説的な議論でなければ、トランプがそうしたと示唆することはできない。
これとはかなり対照的に、バイデンはいくらか打撃を与えている。ニューヨーク証券取引所での中国本土企業の上場廃止、半導体やチップ製造装置、その他の重要技術への中国のアクセスを制限する動きは、事実上あらゆる分野のイノベーションの未来を支配するための習近平の「Made in China 2025」計画を妨げている。
中国がバイデンの経済封鎖を回避する方法を見つけようと試みることは可能だ。すでにそうしている。しかし、見つけるには時間がかかり、習近平政権がめったに能力を発揮できない微妙な外交が必要だ。
その一方で、習近平はスーパーコンピューター、誘導兵器、新しい代替エネルギー源の考案、優れた電気自動車の製造、人工知能ツールの改良、反体制派や少数民族を監視するネットワークの拡大などで中国の力を強化する能力は、トランプが2期目を手に入れていた場合よりもはるかなものに複雑になっている。