台湾の中央通信社が報じた金融監督管理委員会の発表によると、企業向け融資や投資、銀行間利用を含む9月末の融資残高は約1兆1900億台湾ドル(約5兆4000億円)と、前年から2340億台湾ドル減少した。
この1兆1900億台湾ドルは、銀行業界の自己資本の28.9%を占めるが、同委員会が9年前にデータを収集し始めて以来で最も低く、5月末時点では30.2%だったという。
中国政府は、台湾の主権を有すると主張しているが、台湾は人口2400万人の民主主義国家だ。経済規模は世界第22位で、半導体メーカーの台湾積体電路製造(TSMC)をはじめ、フォックスコンやペガトロン、ライトオンテクノロジーなどのアップルのサプライヤーを含む、世界的なテクノロジー企業が台湾に本拠を置いている。
8月にナンシー・ペロシ米下院議長の訪台を受け、中国人民解放軍は台湾周辺で大規模な軍事演習を実施した。台湾政府の統計によると、1991年以来、台湾政府が承認した対中投資額は約2000億ドルにのぼり、台湾は中国本土における最大の投資家の1つだという。
バイデン大統領は、インドネシアで開催された主要20ヶ国・地域首脳会議(G20サミット)に先立ち、習近平国家主席と3時間半の会談を行った。大統領は会談後の記者会見で、「中国側が台湾に侵攻しようとする差し迫った動きはないと考えている」と述べた。先週の中国株式市場では、G20の後に中国と西側諸国との緊張が緩和されるとの期待から、まちまちな動きとなった。
台湾の銀行による融資の減少は、中台の絆が弱まっている兆候の1つだ。米国に本拠を置く戦略国際問題研究所(CSIS)が今年半ばに行った調査でも、台湾企業が中国本土へのエクスポージャーを減らすことに関心を高めていることが示された。同調査では、「台湾は中国大陸への経済的依存を減らす必要がある」という意見に対して、台湾企業525社の約76%が賛成し、反対したのは21%だけだった。
中国進出した企業の3分の1が移転を検討
CSISによると、中国本土でビジネスを展開している台湾企業の4分の1以上が既に生産または調達の一部を移転しており、3分の1が移転を検討しているという。移転の予定が全くないと答えたのは31%に過ぎなかった。
フォーブスが今年発表した台湾の富豪ランキングで、上位3人のうち2人が金融事業に携わっている。キャセイ・フィナンシャル・ホールディング(国泰金融控股股分有限公司)会長のTsai Hong-tu(蔡宏圖)と弟のCheng-ta(政達)は資産額105億ドルで第2位となり、富邦フィナンシャルホールディングスのリチャード・ツァイとダニエル・ツァイは資産額96億ドルで第3位だった。
(forbes.com 原文)