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2022.11.25

高城剛×四角大輔 2028年以降の大変革時代を生き抜くサバイバル術

長年日本に居を持たず、自律分散的な生き方を続ける高城剛氏(左) 四角大輔氏(右)


四角:子どもって飽き性じゃないですか。うちに1歳半の息子がいるんですが、昨日まで大好きだったオモチャを、今日は触りもしない。

高城:ヨハン・ホイジンガーの「ホモルーデンス」ですね。人間の本質は遊びにあり、そこから道具が生まれ、飽きるから文明が進歩する。

四角:「飽きるから次に進む」という性質こそが人間の本能なんですね。

高城:結果としてですが、基本的に自分の使う道具の大半を自分で作っています。服はもとより、今回の映画でもカメラのクレーンやドリー、そして持ち運ぶバッグを自作しました。

四角:10年以上前、高城さんに「これからのクリエイターは広告やアートじゃなく、ライフスタイルで表現するんだよ」と言われたことがあって。それ以来、「ライフスタイル・アーティスト」という概念を頭に活動してきたんですが、高城さんはまるでマレー・ブックチンが提唱した「ライフスタイル・アナーキスト」。

高城:僕は自分をアーティストだと思ったことはないし、アナーキストだと思ったこともありません。なにしろ、頼まれた仕事では、資本主義の極みであるハイテクマーケティングを駆使して綿密に戦略を立ててます。CPMやCPAも予想値を割り出して、随時クリエイティブとコミュニケーション戦略を変えています。

一歩先を生きていると自負しているので、3カ月後にこうなる、半年後にこうなるとか、他の人より感じやすいんでしょうね。中間選挙のあたりにはこうで、FRBや円安などの動きはこうでと、社会動向がなんとなくだけどわかります。

だからモノを売ったりサービスインするなら今じゃなく、半年後の方がいいですよ、などと僕なりにアドバイスすることもあります。


市販のミラーレスカメラとMacbook Proだけで映画を作る高城氏の「NEXTRAVELER FILMS」

四角:まさに資本主義ハックですね。表現に関して最近どう思いますか? 

高城:個人の表現っていうのは、いまやデジタルアーカイブされ半永久的に残る。ある時代の人々がどういう気分だったかということは、アートをはじめとする表現に封印されるようになりました。

表現は、刹那的にモノや情報をSNSに出すのではなく、半永久的に置いておけるようなアーカイブにこそ価値がありますね。インターネットの分散の次の力は、アーカイブなんですよ。時間を超越できますから。

四角:なるほど。今の音楽なんてまさにそうですよね。ぼくがレコード会社時代にプロデューサーをやっていた頃とは様変わりしていて、今ヒットを出せるかと聞かれたらまったく自信がない。

高城:ビートルズの曲と昨日出た新人の曲が、同じところに置いてあります。今の子たちは時代関係なく、同じ値段で簡単に音楽が聴けるわけで、リニアで判断していません。それはデジタル・アーカイブ化の力ですよね。僕らはその前提でモノ作りを考えなければならない。

四角:この映画はキューバで撮影しているし、民主社会主義を描いていて、アメリカが牽引した行き過ぎた資本主義へのアンチテーゼのように感じますが、それは分析した上での表現ですか? 主観ですか?
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文=国府田 淳 写真=小田駿一

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