四角:やはりミニマル(最小・最軽量化)がカギですね。ちなみに、人が入るカバンとは?
高城:そのまま海外にも運べるコンテナとシャーシで出来ていて、インフラフリーで水や電気がない場所でもやっていける、まさに「人が入るカバン」です。来春から八ヶ岳でオープンハウスを予定しています。
四角:有事や災害時に安全地帯に素早く移動し、自律分散して生き延びる。究極のサバイバルツールですね。
ぼくの分散サバイバル術は、地政学的にハイリスクな北半球の大国や、母国日本から遠く離れた、ニュージーランドの湖畔の森で営む自給自足ライフです。3.11の前年からオフグリッド的な森の生活を開始し、2019年から食料自給率をさらに高めました。
自宅前の湖の湧き水が飲料水。タンパク源は湖で自然再生される大きなマスと、近くの海で釣る野生魚。庭のオーガニック菜園、ハーブ園、果樹園で作物を育て、周りの森で採集をしています。
四角氏の自宅は、ニュージーランドの小さな田舎町からさらに20km離れた山奥にある。水道もなく、ケータイも圏外
高城:僕は「半径50メートルの幸せに溺れるとリスクが高まる」とよく話します。繰り返しますが、常に素早く動けることが、インターネット時代の基本なんです。
四角:ぼくは登山家・釣り師でもあるので、釣具とテントと衣食を詰めたバックパック一つあれば、どこでも生きていけます。自給自足スキルとアウトドアスキルは、中央集権的グローバル経済から身を守るための、脱資本主義的なリスク分散術だと思っています。
日本ではコロナ以降、自然豊かな地方に移住したり、静かな郊外と都市の2拠点生活がトレンドになっていますね。
高城:そういうトレンドにはまったく興味ないんですが、個人的なトレンドは、食べる量を劇的に減らすこと。その方が調子よく、身体が軽くなって素早く動けるんです。
僕の遺伝子を調べると、野菜が合わない。野菜が体にいいっていうのは、ある種の人にとっては間違いです。果物もそう。
人間のゲノム(DNAのすべての遺伝情報)は、この10万年のあいだに0.5%しか変異しておらず、長い間、砂糖も乳製品もない生活を送ってきた人類は、がんや心臓病、虫歯などとは無縁でした。約12万年前から3万7000年前にかけて、ネアンデルタール人は相当な肉食偏重で、食事からとるタンパク質の大部分は、大型の草食動物の肉から得ていたこともわかっています。
その後、クロマニョン人など現生人類に近い人類の出現と同時に、食料に占める大型動物の肉を食べる割合がさらに増え、動物の肉が食事全体の5割を超えました。
だから人間の本質である良質な肉食を中心に、油をエネルギーに変え、ケトン体エンジンを体に装備できていれば疲れたり不調になることはないんです。もちろん当時はジムもなく、日々、手に持てる荷物だけ持って歩いていた。それこそが人間本来の生き方であり、本質的なサバイバル術なんですよ。
四角:高城さんの新刊『BIO HACKING』で、食事の常識が覆されていて衝撃でした。ぼくは肉は食べないのですが、祖先の「手に持てる荷物だけ持って歩く」生き方は、新刊に書いた「これさえあれば生きていける」というミニマル思考と同じですね。ぼくは、バックパック一つで生きていけますし。
四角氏は『バックパッキング登山入門』『バックパッキング登山紀行』(共にエイ出版社)を上梓するなど登山家でもある