なぜこれほどジェンダーギャップが生じてしまうのか。そこには、組織の体制や社会制度、女性自身のマインドセットも含め、構造的な問題が絡んでいます。
まず日本社会には性別役割分業、男性が主として稼ぎ、女性は働いたとしても補助的な稼ぎで、家事育児を担うといった意識が根強く残っています。先ほど医療や報道の現場で、女性が宿直勤務のローテーションに入れないという話をしましたが、なぜかと言えば、女性がワンオペ状態で家事育児を担っているからですよね。
1990年代には共働き世帯が専業主婦世帯を逆転し、ここ30年、働く女性は飛躍的に増えました。でもその内訳を見てみると、増えたのはパート・アルバイト・派遣・契約社員といった非正規雇用で、今でも女性雇用者のうち半数は非正規雇用です。
正社員として就職しても、子育てを機に辞めて、一旦労働市場から出てしまうと、子育てが落ち着いて戻ろうとしたときに正社員の道が閉ざされてしまう。そもそも採用数が少ないのに、一旦辞めてしまうと再就職の道も閉ざされているため、企業内の女性の母数が減っていってしまうんです。
さらに、数少ない女性社員の中から管理職に抜擢されたとしても、女性側に自分を過小評価する「インポスター症候群」の傾向があって、躊躇してしまう。ただその「自信過小」問題も個人の問題というより組織的な問題の方が影響が大きいと思っています。
様々な調査によると、入社後20代の間に与えられるチャンスと経験にも、男女差があると言われています。男性は複数の部署を異動し、ビックプロジェクトを任せられるけれど、女性は人事や広報など特定の部署での経験にとどまる。専門性は高まるけれど、会社組織のことを幅広く見る目が育たないので、管理職に抜擢されたときに自信が持てない。ただでさえ少ないチャンスを、自ら逃してしまう傾向にあるんですね。
両立支援制度を男性も使い、女性が仕事にやりがいを見つけられるように
2000年代に入って、日本企業は育児や介護、家庭と仕事の「両立支援制度」を進めてきました。時短勤務や休職制度をはじめ、両立支援制度は、大企業ではもう十分、これ以上ないってくらい充実しています。ただ、誰が使うかを考えたときに、本人も上司もみんなの頭の中に「女性が使う制度」という刷り込みがあるわけです。子どもが生まれて時短勤務をするのは女性だよね、と。
そうすると、私がかつて宿直勤務ができずに感じたのと同じ、自分だけ早く帰って申し訳ないという罪悪感が女性自身の中に生まれていく。時間が短くても結果を出していれば問題ないんですが、日本企業は長時間働ける人を高く評価する傾向が根強い。結果、時短勤務の女性は二級戦力のような扱いになって、本人もそう感じてしまうことがあります。それで産後の女性が昇進や昇給の道から遠ざかる「マミートラック」に陥っていく。