キャリア・教育

2022.11.13 10:00

面接官が絶対にやってはいけないこと 「ガクチカ」質問は必要か?


「好きなことを頑張れる」のは当たり前


ひとつの理由は、「好きなことで頑張れても、仕事で頑張れるかどうかはわからない」ということです。「力を入れたこと」を聞くと、たいていその人が好きでやってきたことを話します。

内容は、クラブやサークル、趣味、アルバイトなど、必ずしもやらなくてもいいものを自分から自発的にやってきたものが多いです。しかし、そういう「好きなことを頑張れる」のはある意味当然です。

ところが仕事は好きなことばかりではありません。むしろ義務として指示されるもののほうが多いものです。心理学でも「能力は領域固有」で、どんな場面でも同じ能力が発揮できるかはわからないとされています。

好きでやることに対しては発揮できた力が、義務でやらねばならないことに対して発揮できるかは、正直わかりません。

「どんな仕事でも楽しめる」人がデキる人




私は仕事柄、さまざまな会社や仕事における高業績者の特徴を調べることが多いのですが、ひとつの共通点として「どんな仕事でも楽しめる」ということがあります。

同じ仕事でも、自ら主体的に意味付けして退屈な作業や「やらされ感」のある仕事を「やりがいのあるもの」へと変えていくことを「ジョブ・クラフティング」と言いますが、まさにこれができている人がデキる人なのです。

それはそもそも仕事というものは義務だらけであり、必ずしも最初からその仕事をする人にとって「やりたいこと」「好きなこと」ではないことであるからではないかと思います。

それを確認しようと思った場合、「ガクチカ」は最適な質問とは言えません。

課外活動よりも学業について聞いてみる


そう考えると、学業についての話は適しているかもしれません。学生にとって学業はやらなければいけないこと=義務ですから、その点では仕事に似ています。

そういう義務でやらねばならない学業に対して、「どうせなら、楽しんでやろう」「意味あることをしよう」「目的を持ってやろう」というような姿勢で臨んで、いろいろ考えたり行動したりしている人はまさにジョブ・クラフティング的なことをしているわけで、デキる人候補かもしれません。

ところが、さまざまな調査を見ると、学生は「ガクチカ」で学業について語ることは多くありません。たいていは先に述べたような自分がやりたくてやった課外活動について語ります。

つまり、面接する側はあえて聞かなければ学業の話は聞けないのです。

相手が選んだ話はこちらが聞きたいことかはわからない


「ガクチカ」がイマイチなもうひとつの理由は、「相手に任せると聞きたいことが聞けない」ということです。

「ガクチカ」は何を話してもいい範囲の広い質問です。しかし、学生が選んでくれたエピソードが、こちらが聞きたいこと、すなわち採用基準となっている人物特性がわかる情報になっているかはわかりません。

例えば、チームワークが上手にできる人を採りたいと思っているのであれば、集団の中で立ち回ったエピソードを聞かなければならないのに、ひとりきりで自己完結するようなエピソード(受験勉強など)を話されても、そこからチームワーク力を評価することはできません。
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文=曽和利光

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