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2022.11.14 11:30

隈研吾事務所からバーチャル建築へ 番匠カンナの未来予想図

田中友梨

このように、リアルとバーチャルはかなり違う土壌なのですが、アイデアの交換はするべきだと思っています。

例えば、リモートワークが増えているなかでオフィスビルを建てる場合、今までと同じようにフロアを重ねていくオフィスが良いとは限りませんよね。そうしたときに、既存概念にとらわれずに、誰に向けて何のための空間をつくるのかを、体験から考えていく必要があるので、バーチャル建築のノウハウを活用できると思います。


TABLE OF NUCLIDES

——リアル、バーチャル双方でキャリアを積んだ建築家として心掛けていることは。

「豊かな空間を享受できる世界」をつくることです。リアルな建築の世界では、依頼に対して最適解を出していくことが仕事ですが、私はもっと広い意味で、人の考え方が変わる、ライフスタイルそのものを変えるようなものを先取りして、提示したいと思っています。

バーチャル空間では、実際には離れた場所にいる人どうしが同じ空間を使うことができます。そういったことをリアルで活用することで、何か新しいことができると思うんです。どちらかが優れているという考え方ではなく、双方の特性を生かしてみんなが幸せに暮らせる空間づくりをしたい。

バーチャル空間に関しては、それを体験するためのヘッドマウントディスプレイが重いなどの理由で、まだ多くの人に浸透していないのが課題ですが、いずれは解消されるでしょう。例えば瞬きひとつでバーチャルとリアルをスイッチできるとか。そうなればリアルの空間も今のままである必要はないかもしれません。

もっといい住み方や生き方があるかも


——ご自身は将来、どのような空間で生活を送りたいと考えていますか?

今、自分が使える空間が少なすぎると思いませんか? 私は都内に住んでいるのですが、幼い子どもがいて自宅では仕事に集中できないため、すぐ近くに仕事部屋も借りています。このようなケースはかなり特殊だとは思います。多くの人は、家が手狭になったら郊外に広い家を買ったり、借りたりします。そういう選択肢しかないのは苦しいですよね。

実を言えば、私は今のままでも全然足りなくて、都内にも郊外にも家が欲しい(笑)。リアルではそんなことは実現できませんが、バーチャルならできるかもしれないと思っています。そしてリアルでも、もっといい住み方や生き方があるような気がしているので、追求していきたいですね。




*番匠さんは、11月20日(日)午前11時45分〜放送のテレビ朝日『発進! ミライクリエイター』に出演予定。

文=尾田健太郎 取材・編集=田中友梨 撮影=杉能信介

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