飛行機に発電所、水素エコノミーの準備が整いつつある

燃料電池自動車と並ぶ水素ポンプ(Getty Images)


空港ハブから水素ハブへ


インフレ削減法による生産税控除に加えて、1年前に議会を通過した超党派インフラ法は全米を横断する6~10カ所の地域水素ハブの設置に最大70億ドル(約1000億円)を投入する。目標は、水素生産者と産業消費者の相互接続されたインフラのネットワークを作り、クリーン水素の利用を加速することであり、これは2050年ネットゼロを目指す米国政府の計画の一部だ。

たとえば、これらのハブは、天然資源や産業拠点など各地域の長所を最適化することを目指している。天然ガスが豊富な地域もあれば、ソーラーや風力エネルギーの潜在能力の大きい地域もある。一方で企業は、そこで生産される水素をいつでも購入できるように準備しておく必要がある。成功のために不可欠なのは、従来インフラを転換し、新たなパイプラインを構築することだ。

「規制環境が鍵です」とエネルギー省水素燃料電池技術部門フェローのトーマス・グリーンは果す。「ハードルを下げ、利害関係者を関与させることで、最高水準の環境忠実度を保証する必要があります」

現在、水素の99%は石炭と天然ガスの反応によって生成されており、CO2削減に貢献しない「グレー水素」とみなされている。目標は、低炭素エネルギー源から作る「グリーン水素」を生産し、輸送や発電部門へと利用を拡大することだ。Bloomberg New Energy FinanceはHydrogen Economy Outlook(水素経済展望)の中で水素は2050年までに世界エネルギー需要の24%を供給し、CO2レベルを34%削減できると述べている。

それが実現するためには、グリーン水素の価格が下がる必要がある。米エネルギー省は2021年6月に「Earthshot」イニシアチブを立ち上げた。その目標は、クリーンな水素の価格を10年間に80%削減して、1キログラム当たり1ドル(約150円)にすることだ。現在、再利用可能エネルギー由来水素の価格はキログラム当たり約5ドル(約750円)だ。同プログラムが成功して価格が下がれば、製鋼業、クリーン・アンモニア、エネルギー貯蔵、重荷重トラックなどその可能性は無限だ。


ドイツ、ヴェッセリングの水素製造工場(Getty Images)
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翻訳=高橋信夫

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