ウクライナ危機で再生可能エネルギーへのシフトが加速

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国際エネルギー機関(IEA)は、世界のエネルギー利用の展望を改定し、再利用可能エネルギーの急速な普及とウクライナ戦争が世界のエネルギー事情の変化のきっかけになっていると指摘している。2022年10月27日の報告によると、今後の化石燃料需要は、同機関のすべてのシナリオで下降あるいは停滞するのに対し、再生可能エネルギーの普及は加速する見込みだ。

IEAは、エネルギー市場は戦争の影響を非常に受けやすく、混乱の渦に放り込まれているが、この騒動は現在の世界エネルギー供給の本質的問題を露にしていると指摘する。問題は環境に関することだけではなく、不必要な地政学的依存や極端な価格変動と予想外の崩壊の可能性も含んでいる。同機関の分析によると、エネルギーのカーボン・ニュートラル源への遷移は、消費者が経験している最近の価格上昇の主要な要因ではないという。

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IEAによる世界エネルギー供給量予測。2021年実績、2050年(昨年予測)、2050年(本年予測)。単位はエクサジュール(10の18乗ジュール)。石油、天然ガスの炭素回収・貯留利用、石油の非エネルギー利用、従来型バイオガス、原子力を除く(データ出典:国際エネルギー機関)


1年前、国際エネルギー機関は、発表したシナリオによる2050年の世界エネルギー供給に対する再生可能エネルギー(従来型のバイオガスと原子力を除く)の寄与を全体の26%、193エクサジュール(EJ、10の18乗ジュール)と予測した。一年後の2022年、同機関はこの予測を215 EJ(世界エネルギー供給の29%)へと修正した。

最新レポートは、ロシアによる侵攻が、現在の危機で最も争いの多い原料の1つである天然ガスの利用に大きな転換点をもたらすと予測している。昨年時点で、天然ガスの利用は2050年以降にも成長すると予測されていた。現在の予測では、天然ガスの燃焼は2030年代には横ばいになるとされている。2050年までに、世界エネルギー供給における天然ガスのシェアは現在とほぼ変わらない20%前後にとどまると予測されている。

化石燃料は2050年にも全エネルギーの半分以上に


石油でも、そこまで極端ではないが、話は似ている。ここで、エネルギー利用が減少に転じる時期は2030年代に来ると予想されている。このタイミングは最新予測でも変わっていないが、減少速度は早まり、2050年に世界エネルギー供給の21%になると予測されている。石炭は2020年代も枯渇資源に分類されており、多くの国々で最初に解体されるインフラは石炭であると見られている。石炭の主要な用途である発電が、再生可能エネルギーで最も容易に置き換えられるためだ。今世紀中頃、石炭は世界エネルギー供給の15%になると予想されているが、中国、インドなどの国では今も利用が拡大している。

再生可能エネルギーの拡大を強調することに加えて、IEAの最新予測は、世界を石油とガスから引き離すための課題を示している。輸送および多くの産業分野で今も好まれている燃料だ。30年後、石油とガスは依然として世界エネルギー供給の40%以上を担うと予測されている。石炭と合わせると、化石燃料が世界エネルギー需要の大半を満たしている状態は2050年まで続くが、2020年の4分の3からは減少するだろう。再生可能エネルギー、従来型バイオマス、および原子力を合わせると、気候中立エネルギー源は、2050年に世界エネルギーの38%を供給することになる。これは、地球規模の排出量が2025年までにピークを迎えることを意味しているとIEAのリリースは伝えている。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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