ビジネス

2022.11.01

​​大学発スタートアップ創業期にVCが必要な理由 起業家と投資家が議論


──事業をピボットするにあたって、どんな課題や葛藤を TUSICと一緒に乗り越えたのでしょうか。

志倉:ハイレゾは創業10年以上の歴史があったため、メンバー全員の理解を得ることが大変でした。

メンタルの葛藤も大きかったですね。社員には「この先どうなるんだろう」という不安があったと思います。自分には会社のメインストリームから脱落するかもしれないという怖れもあったでしょう。なるべく役員のメンバーには、コミュニケーションを取るように心がけていました。

志倉喜幸
志倉喜幸氏

片寄:たしかに、はじめはClaifさんと同じく、チームビルディングが課題でした。ハイレゾさんの場合、COO、CFOが不在だったので、その穴を埋める必要もありました。私たちが代わって手助けしたこともあります。とくにシード期のベンチャー投資では、全て揃ってからスタートするのではなく、VCが足りないリソースを補うことも必要になると思います。

また投資家の立場から、従業員の人たちとのコミュニケーションも大事にしました。私たちの勝手な都合を押し付けて、本人たちの納得がいかないのは良くないと思ったからです。

私たちが出資することで「会社がどう変わるのか」「最終的なゴールは上場ではない」ということを説明し、ミッションは「一緒に社会貢献できるビジネスに育てていくことだ」と語りました。意志統一ができるまで、何度も説明を尽くしましたね。

投資だけでなく起業前の相談も


──鮫島さんや片寄さんのように、早い段階からキャピタリストが伴走する姿勢が、大学発スタートアップには必要なのですね。アカデミアから起業をめざす人たちへメッセージはありますか?

瀧口友里奈
瀧口友里奈氏

小野瀬:「起業するなら1日も早くスタートしたほうがいい」と言いたいです。技術がない、経験がないなどと心配する必要はありません。私もいちからディープテックを学び、いまでは周りが驚くくらい成長できました。

志倉:大学の先生たちは、起業を目指す皆さんから「こんな課題を解決したい」というアプローチを待っています。大学の門を叩けば、何か良い事業のタネが見つかるかもしれません。そのためには、とにかく何度でも大学を訪れることです。

鮫島:現在の日本では、アカデミアからの起業は難しいという考え方が一般的ですが、これはもったいないことです。私たちVCが経営人材とのマッチングを手伝いますので、アカデミアの人たちにはぜひ起業を前向きに検討してほしいと思います。

片寄:私たちVCの役目は投資だけではありません。起業するかどうかを決める前の相談でもいいんです。早い段階から来ていただくと、成功確率も高まると思うので、ぜひ気軽に相談してください。

文=吉見朋子 撮影=曽川拓哉

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