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2022.11.01

​​大学発スタートアップ創業期にVCが必要な理由 起業家と投資家が議論

大学などの研究職であるアカデミアからの起業が注目を集めている。大学発スタートアップは、研究の社会実装まで長い時間がかかり、資金繰りなどに苦労するケースも多いが、その反面いままでにない破壊的イノベーションを生み出す可能性を秘めている。

そのなかにあって企業創出や起業家支援を目的としたプラットフォームも生まれ始めている。いま求められているのは、それらのプラットフォームを有機的に統合していくこと。起業家や大学の産学連携部門、ベンチャーキャピタル(VC)などを結集した、ひとつなぎのエコシステムを構築していくことが必要になってきているのだ。

Forbes JAPANとGTIE(東京大学・東京工業大学・早稲田大学を主幹機関とした大学発スタートアップ育成のプラットフォーム)は10月21日、そうした課題を有識者らと議論する「ACADEMIA ENTREPRENEUR SUMMIT」を開催した。

そこで登壇した、スタートアップの起業家たち、そして彼らを支えるVCのキーパーソンに、出会いと創業初期に必要なものとは何かについて聞いた。

【パネリスト】
小野瀨隆一(おのせ・りゅういち)◎Craif代表取締役社長で共同創業者。三菱商事を経て、2018年5月にガン医療の改革を目指すIcaria(現Craif)を創業。

片寄裕市(かたより・ゆういち)◎東京理科大学イノベーション・キャピタル(TUSIC)代表取締役マネージング・パートナー。日系保険企業、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントを経て、2015年、東京理科大学インベストメント・マネジメントに参画。

鮫島昌弘(さめしま・まさひろ)◎ANRIジェネラル・パートナー。鹿児島県出身。東京大学大学院修士課程卒。三菱商事、東京大学エッジキャピタル(UTEC)を経て、VCのANRIに参画。

志倉喜幸(しくら・よしゆき)◎ハイレゾ 代表取締役。大学在学中、日本最大級のGPU専用データセンターハイレゾを2007年に創業。

【モデレーター】
瀧口友里奈(たきぐち・ゆりな)◎経済キャスター、東京大学工学部アドバイザリーボード、グローブエイト代表取締役、東京大学工学部アドバイザリーボード、新生銀行 社外取締役。経済専門チャンネル「日経CNBC」など多数の番組でMCやキャスターを務める。


VCの猛烈なアタックのおかげで


──小野瀬さんが起業したきっかけ、そしてANRIとの出会いを教えてください。

小野瀨隆一(以下、小野瀬):私は三菱商事に新卒入社した後、2018年に生体分子の網羅的解析でガン医療の改革を目指すCraifを立ち上げました。 起業した理由は、身内をガンで失った体験から、ディープテックでガンとの戦いに終止符を打ちたかったからです。

小野瀬隆一
小野瀨隆一氏

しかし、自分には技術も知識もなかったので、なかなか前へ踏み出せませんでした。それで友人にANRIの鮫島さんを紹介してもらい、退路を断つようにそれまで働いていた会社に辞表を提出したのです。
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文=吉見朋子 撮影=曽川拓哉

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