ビジネス

2022.11.14 17:00

「クリエイティブ x ビジネス」の一歩目とは? Droga5 の回答

アクセンチュア ソング CEO兼 クリエイティブ・チェアマン デビッド・ドロガ / photo by ヤン・ブース

アクセンチュア ソング CEO兼 クリエイティブ・チェアマン デビッド・ドロガ / photo by ヤン・ブース

不確実性が増すなか、企業に求められているのは、顧客を生活者として捉え直し、彼らを含む社会全体に価値を提供することで自社も成長するための企業全体の変革だ。世界大手コンサルティング会社アクセンチュア ソングはその変革を「ライフ・セントリシティ(Life Centricity)」と呼び、クリエイティビティを活用した顧客接点を起点とした企業変革への取り組みを推進している。その推進力のひとつが、同社が2019年4月に傘下に置いた世界屈指のクリエイティブエージェンシー「Droga5」だ。
 
Droga5は2021年5月、東京を「新しい成長の拠点」ととらえDroga5 Tokyoを開設。さらにDroga5を抱えるアクセンチュア ソングは22年4月に組織改変を行い、デザイン・クリエイティブを起点とした企業の経営改革の実現へと注力している。「ビジネスにおけるクリエイティビティとは何か?」。Droga5の創業者でアクセンチュア ソングのCEOデビッド・ドロガが10月に来日。Forbes Japanの独占インタビューに答えた。


私たちは最初に何をすればいいのか?


───日本ではクリエイティブとビジネスを紐づけて考えるカルチャーがありません。クリエイティブというと、何かカッコいいものをデザインすることだととらえる傾向にあります。

日本だけでなくグローバルに言えることですが、クリエイティブというと、アートや音楽を創造することと考えられています。あるいは、製品のマーケティングや商品中心のコミュニケーションを生み出すベースとなるものと思われがちかもしれません。

が、実際は、クリエイティブとは、何かを生み出す新しい発想や可能性であり、課題解決のアプローチであり、私たちを前進させる原動力にもなる重要な要素なのです。ビジネスであり、サイエンスでもあり、アートでもある。ビジネスの根幹をなすものだと、私は考えています。

───クリエイティビティをビジネスに応用するために、私たちが最初に取り組むべきことは?

世の中の人々が私たちに何を求めているのか、そして、私たちは人々や社会に対して何を貢献できるのか、またお客様に何を提供できるのか、まずクライアントだけでなく人々や社会全体を踏まえた広範囲な視点で考えることです。

人々や社会は企業の存在意義や哲学、そして未来の方向性を注意して見ているのです。現状の延長線で何ができるかではなく、まずはどんな未来にしたいのか、を思考することです。作るべき未来像を起点に、次に踏むべきステップに掘り下げていくのです。現状維持や古い価値観に固執するのではなく、この先向かう方向性や新しい価値観について考える。クリエイティビティとは、イノベーションであり、可能性であり、また機会でもあることを意識すべきです。

───例えば、数々の難題を抱えている製造会社で、クリエイティブなアイデアをもとにトランスフォーメーションを図ることを検討しているとします。最初に取るべき具体的な方法は何でしょうか?
 
まずお伝えしたいのは、クリエイティブは、コミュニケーションやマーケティングに限らないということです。製品の製造方法や、自社製品が顧客にもたらす価値についてあらためて考えてみることもクリエイティブです。そもそも顧客はどのような人で、どのような機能や製品を望んでいるのかについて考えてみれば、製品だけではなく、組織も改革が必要だと気づくかもしれません。クリエイティビティとは「現状」ではなく「こうだったらいいな」という可能性に着目することです。
 
他社との差別化だけを目的に、他社と違うことをするのがクリエイティブではありません。顧客に提供したい価値を定め、実現に向けた最適な方法を見つけることがクリエイティブです。顧客をどう見るのか、どのような製品を提供したいのか、そのために事業をどう運営していきたいのか、こうした姿勢こそがクリエイティブだと私は考えます。

───アクセンチュアは様々なチームによる結束力で企業の成長を促す役目を担っているのに対して、ソングの役目、あるいは立場はどのようなものなのでしょうか?

アクセンチュアは、様々な専門性を持ったメンバーで、クライアントの事業課題の解決や事業拡大の支援に当たります。一方、ソングは、企業体が人々から共感を持って選ばれ続ける存在になるために、ともに変革を起こすことに重点を置いています。真に優れた顧客体験は接点だけを改良すればよいわけではなく、新事業を創造することもあるでしょう。
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文=中沢弘子 写真=ヤン・ブース

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