日本において、グローバルな世界と連携する「スタートアップ・エコシステム(生態系)」は育成できるのだろうか。早稲田大学ビジネススクール(WBS)の牧兼充 准教授が、エコシステムを形成する関係者へのインタビューを通じてその課題と可能性を探る。
今回のゲストは、米アクセラレータ「Techstars(テックスターズ)」のMaëlle Gavet(マエル・ガヴィ)CEO。2006年創業のテックスターズは、世界アクセラレーターランキングで常にトップクラスに入り、世界各国で46のアクセラレーションプログラムを実施し、これまでに延べ3090ものスタートアップ、19のユニコーン企業を輩出してきた(22年10月現在)。
同社は、ジェトロが内閣府「スタートアップ・エコシステム形成推進事業」拠点都市を中心にスタートアップ企業を対象に2020年度から実施している「スタートアップシティ・アクセラレーションプログラム(Startup City Acceleration Program)」の一つに選定されている。
テックスターズに期待されている役割、日本の起業家の可能性、そしてアクセラレータがスタートアップ・エコシステムに寄与できる点とは?自身も元起業家で、テックスターズ初の女性CEOのガヴィが思うところを余すことなく語った。
牧 兼充(以下、牧): まず伺いたいのは、テックスターズが実施しているアクセラレーションプログラムについてです。テックスターズは、ジェトロが内閣府「スタートアップ・エコシステム形成推進事業」拠点都市を中心にスタートアップ企業を対象に2020年度から実施している「スタートアップシティ・アクセラレーションプログラム(Startup City Acceleration Program)」の一つに選定されています。具体的には、どのようなものなのでしょうか?
マエル・ガヴィ(以下、ガヴィ):このプログラムは内閣府の戦略の一環であるジェトロの「startup ecosystem formation promotion project」により実現したものです。目的は、地方自治体が地元のスタートアップを育て、それらの企業がテックスターズやベンチャー投資会社の支援のもと、ビジネスをグローバル展開できるようにすることにあります。非常に野心的なプログラムですね。
プログラムでは、日本のスタートアップに、メンターシップや教育、ネットワーキングの機会を提供します。海外展開に備えた専門家による講義やピッチ(プレゼンテーション)の指南のほか、投資家や元起業家による1対1のメンタリングが行われます。そして、プログラムの最終段階でいわゆる「Demo Day(デモ・デイ)」と呼ばれる投資家や企業関係者、行政のリーダー向けのプレゼンテーション・イベントがあります。
これは日本のみならず、海外のオーディエンスも参加するので、国外での認知度も高まります。
テックスターズが一流のメンターを手配することもあって、参加するスタートアップはこの国際的なネットワークとつながる機会が得られます。そのうえ、スタートアップに必須な教育やリソースにもアクセスできます。私たちは世界各国でアクセラレーションプログラムを運営していることもあり、豊富な経験をもちあわせています。