牧:日本のスタートアップ・エコシステムの課題の一つに、スタートアップのメンバーの多くが日本人で構成されている点があります。国内マーケットを意識しすぎてしまい、グローバル展開するにあたってそれが弱点になってしまうことがあるのです。視野が狭くなってしまう可能性もあります。それについてはどうお考えでしょうか。
ガヴィ:まず、日本は歴史的に多くのイノベーションを創り出してきたと私は考えています。その点、日本のイノベーターや起業家はもっと評価されていいのではないでしょうか。そのうえで敢えて言えば、広大なエコシステムと連携するようになったほうが、日本はより多様な便益を享受できるようになるはずです。シリコンバレーがテクノロジーの領域でこうも強大になれたのは、驚異的なまでの多様性をもったエコシステムを作り上げたからです。
シリコンバレーでは、イスラエルやフランス、ロシアなど、さまざまな国と地域から優秀な人材が集まり、切磋琢磨しています。日本に限らず、どの国の企業や人材もこういった多様なエコシステムに参加することでより多くを得られるのではないでしょうか。
牧:日本のスタートアップは国内市場をターゲットにしていることが多いですが、グローバル思考をもつことでさらなる市場の拡大が見込めます。グローバルに展開するスタートアップにとっては英語力も課題の一つになると思いますが、どの程度のレベルが求められているのでしょうか?
ガヴィ:私が初めて楽天の代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏に会ったのは、楽天が英語を社内の公用語にしたときでした。当時、メディアは日本では「現実的には不可能」だと書いていました。でも、三木谷会長兼社長は、「楽天をグローバル企業にしたいから社員が英語を話せなくてはいけない。これは重要なことだ。そして、日本人は決められた目標は必ず達成できると信じている。だから、これは社員全員が英語を話せるようになるための第一歩だ」と、語っていたことを覚えています。
私がこれを話すのは、“英語問題”が多くの日本のビジネスパーソンにとって永遠の課題であることを知っているからです。でも私は、日本の人々は一度、目標を見つけるとそれを達成する力が高いことをこの目で見てきました。
そしてご質問への答えですが、私たちのプログラムではいっさいが英語で行われます。そして、テックスターズのネットワークとつながれるよう、英語を話すことも選定の条件になっています。なぜなら、テックスターズが誇るメンターや投資家のネットワークにアクセスできることこそが最大の資産になるからです。
牧:テックスターズ共同創業者の一人、デビッド・ブラウンは、スタートアップを選ぶ際の6つの基準として「Team, Team, Team, Market, Progress, Idea(チーム、チーム、チーム、マーケット、進歩、アイデア)」といったものを挙げていますね。それくらい「チーム」の存在が大切だと訴えています。ガヴィさんにとっての「優れたチーム」の定義とは、どういったものでしょうか。
ガヴィ:とてもいい質問ですね。私にとっての優れたチームとは、変化に対して柔軟に対応できて、辛抱強いチームでしょうか。なぜなら、必ずと言っていいほど、計画通りにはいかず、想定外の事態が起業家に訪れるからです。我慢強さがあり、常に新しいアイデアをもち続けられる起業家なら、危機や機会が訪れるたびに臨機応変に対応でき、成功する確率が格段に高まります。だからこそ、私たちは課題を解決する情熱をもつ人々を探し続けています。