ビジネス

2022.10.29

テックスターズCEOが語るアクセラレータの進化

INNOVATION ARCHITECT


牧:ご著書の『Trampled by Unicorns: Big Tech’s Empathy Problem and How to Fix It』(未邦訳)でも、「共感に欠けている」という、その規模ゆえに大企業が抱えている課題や、その処方箋の一つとしてスタートアップについて期待されている点について触れています。テックスターズのCEOとして、未来の起業家を育成するに当たって、どういった社会課題を解決したいとお考えでしょうか。

ガヴィ:
本を書いた目的は、偉大な企業を作り、偉大なリーダーになるには、経営者や起業家が下す決断が、社員や地元のコミュニティ、ひいては世界にどのような影響を与えるかについて考えてほしかったからです。

「共感力」は、起業家が未来を見通すうえで大きな力になると私は考えています。そして、そのインパクトについて考えられるようになると、リーダーとしての強さにもつながります。起業家は、共感できるようになることでより多くを得られるはずです。

牧:日本のスタートアップは、チームビルディングの点でも課題を抱えています。少なくとも、日本のスタートアップ・エコシステムにはまだダイバーシティ(多様性)を考慮したチームビルディングをするメカニズムがないと私は考えています。

しかし、NASDAQのように米国では企業の取締役会に女性の取締役を必須とするなど、DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)の観点はもちろん、多様なバックグラウンドから人材を求めるようになっています。やはり、テックスターズでもDE&Iを意識したチーム作りを起業家に求めていますか?

ガヴィ:テックスターズではいま、スタートアップ・エコシステム全般をどのように手助けできるか、さまざまな議論を重ねているところです。すでに2020年の段階で、ジェンダーや人種、宗教の少数者を代表する創業者を支援するための努力目標も設定しています。それでもまだ進行中です。どうすれば、テックスターズがアクセラレータとして創業者たちの力になれるか──。常にその点だけを考えています。

ただ、こうすべきだと起業家たちに指示するのではなく、あくまで彼らを手伝うのが目的です。そうしたこともあり、DE&Iでもデータなどを示しながら、多様であればあるほど事業の成功率が高まる点などについて伝えています。それに多様性に満ちた取締役会であれば、議論もより開かれたものとなり、多様な取締役の視点を通じて、経営者は世界を新しい角度から見られるようになるでしょう。
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インタビュー=牧 兼充 写真=能仁広之

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