ビジネス

2022.10.29

テックスターズCEOが語るアクセラレータの進化

INNOVATION ARCHITECT


牧:日本の場合、自社の経営戦略に合っているかを熟慮せずに、大企業がアクセラレータと提携する傾向が見られます。考え抜かれた戦略が不在のまま、「オープン・イノベーションを期待できるかもしれないから、アクセラレータと組んでみようか」と、まるで思いつきのように組んでしまいます。

お話から、テックスターズのアクセラレーションプログラムがあらゆる事業領域に対応し、チームづくりを手伝い、メンターや投資家とつなぐことで選択肢を広げることを得意としていることがわかりました。逆に、アクセラレータに「期待すべきでない」こととはどういったものでしょうか。

ガヴィ:面白い質問ですね。アクセラレータと組むのが効果的かどうかは、スタートアップがどのステージにあるか、で決まると思います。アクセラレーションプログラムに参加したい場合は、起業家はスタートアップとしての事業アイデアを持っている必要があるでしょう。

アイデアがまだないなら、時期尚早と言えます。またすでに事業として成功しており、顧客もたくさんいるのなら、やはり参加するメリットはありません。アクセラレータには、起業家としての価値を最大限に引き出す瞬間、つまり、プレシード(創業準備段階)で参加するのがいちばんよいのです。

牧:シリコンバレーや他国の都市にあるスタートアップ・エコシステムを、日本のスタートアップ・エコシステムと比較したとき、日本の強みや特徴はどのようなところにあると思いますか?

ガヴィ:日本のスタートアップ・エコシステムはイノベーティブなものだと思います。世界的にも教育レベルが高いこともあり、人材が豊富です。とりわけ、エンジニアリングの領域では卓越しています。そうした日本の大学が輩出する人材と、日本が過去に生み出してきたイノベーションの歴史、日本政府による企業支援とを組み合わせたとき、いっそう力を発揮すると私は確信しています。日本のスタートアップ・エコシステムの本領が発揮されるのは、これからです。


牧 兼充(マキ カネタカ)◎早稲田大学ビジネススクール准教授。15年カリフォルニア大学サンディエゴ校にて、博士(経営学)を取得。慶應義塾大学助教・助手、カリフォルニア大学サンディエゴ校講師、スタンフォード大学リサーチアソシエイト、政策研究大学院大学助教授などを経て、17年より現職。カリフォルニア大学サンディエゴ校ビジネススクール客員准教授を兼務する。

専門は、技術経営、アントレプレナーシップ、イノベーション、科学技術政策など。近著に「イノベーターのためのサイエンスとテクノロジーの経営学」(単著、東洋経済新報社)、「科学的思考トレーニング 意思決定力が飛躍的にアップする25問」(単著、PHPビジネス新書)、「『失敗のマネジメント』がイノベーションを生む」(『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』2020年3月号掲載)、『東アジアのイノベーション』(共著、作品社)、『グローバル化、デジタル化で教育、社会は変わる』(共著、東信堂)などがある。

インタビュー=牧 兼充 写真=能仁広之

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