セルフレジは善か悪か? テクノロジー導入の摩擦を減らすには

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キャッシュレス、セルフレジ、タッチレスなど、小売店舗で画像認識やQRコードといったテクノロジーを活用し、省人化を実現する動きが活発だ。

アメリカでは、2016年にアマゾンが自社のリアル店舗であるAmazon GOを開店、レジのないJust Walk Out(出ていくだけ)Technologyを導入し、決済プロセスのない新たな体験を消費者に提供した。同システムは現在「アマゾン・ゴー・グロサリー(Amazon Go Grocery)」や大型スーパー「アマゾン・フレッシュ(Amazon Fresh)」に拡大している。またフィンランドのNeste社はRFIDを活用したセルフチェックを導入し、2020年に無人店舗であるEasy Deliをオープンした

意識の変革が求められるテクノロジー


何事も同じだが、新しい物事が定着するには時間が必要である。筆者が先日、混み合うお昼どきに自宅近くのコンビニへ立ち寄った際、新設されたセルフレジ前に行列ができていた。セルフレジに慣れていない人が一定数いたからだ。こうしたセルフレジの導入により、消費者の新しい負担が生み出されたという声もある。

つまり、セルフレジといったテクノロジーが効果的なソリューションとして必ずしも好意的に受け入れられない部分もあるのだ。ITmediaの調査によれば、28%以上の消費者が機械の不具合や操作ミスといった理由から使いづらいと感じており、非営利のニュースメディアPRISMはレジ係に「顧客にセルフレジの使い方を教える」という新たな負担を強いていると報じている

三重県にあるスーパー「バロー北浜田店」では、セルフレジの使用を停止したというニュースもある。セルフレジを理解して顧客に説明できる人材の不足に悩んでいたという。

また、レジ打ちという作業を消費者が担うようになると、「セルフレジが行列している時に子どもにバーコードスキャンをさせるべきか」という、消費者間の新たな摩擦も生まれているようだ。興味本位でスキャンをしてみたい子どもと、それによって待ち時間が長くなることへの不満が摩擦となっているのだ。

待ったなし、人口減の波


とはいえ小売業界を取り巻く環境は厳しい。総務省の調査では、日本の25〜44歳の労働力は2014年頃から継続的に減少し、今後も減少の一途を辿ると見込まれている。農水省の報告書では、小売業が製造業等に比べて高い欠員率となっており、労働集約的で生産性が低いとも指摘されている。

特に小売店には、決済業務だけでなく、入荷作業、欠品の確認と品出し、賞味期限に応じた値下げ業務など、人手に頼った業務が多く存在している。こういった業務の負担を軽減し、生産性を上げるといった意味でもテクノロジーは有用だ。

日本経済新聞の小売業調査によると、35.3%の企業が2021年度に必要な人員を充足できなかったと回答している。このままでは消費者はこれまでと同様のショッピング体験を享受できなくなってしまうかもしれない。
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文=三井朱音

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