こうした物流業界の課題に対して、どのようなアプローチが有効だろうか? 同時に、サービスを利用する私たちが考えるべきこととは──。
物流需要の約36%が運べなくなる?
皆さんは、どのくらいの頻度で宅配便を受け取っているだろうか。コロナ前と比べて受け取る回数が格段に増えたという人も少なくないだろう。事実、年間の宅配便個数は年々増加しており、国土交通省の調査によれば、2021年は前年比11.9%増の約48億個に到達している。
一方で、荷物を配達する人材の不足は解決の目処がたたない。宅配個数が増えたことによる労働環境の悪化に加え、少子高齢化の影響も大きい。日本ロジスティクス協会は、2030年には物流需要の約36%が運べなくなると試算している。物流の2024年問題(働き方改革関連法により同年4月から物流業界に生じる様々な問題)も、この課題に拍車をかける。
そもそも現在の宅配便のシステムは、宅配業者が配達している荷物の総量(とキャパシティ)に関わらず、予め定められた配達スケジュール枠と料金が適応される。企業努力の賜物ではあるのだが、常に同一のサービスを提供し続けることが現場に負担を強いているともいえる。
そうだとすれば、そこにデータを活用したサービスの柔軟性をもたせることで、課題を解決に導くことはできないだろうか。
データ活用で配送効率改善に取り組むUPSとFedEx
例えば欧米の物流企業では、データを活用して物流に柔軟性を持たせようとする動きが活発だ。
グローバル出荷・運送・物流サービスのUPSでは、2016年から配送ルート最適化の仕組みとして、「ORION(On-Road Integrated Optimization and Navigation)」を導入している。これは、どういうルートで配送すれば効率的になるのかを計算して、ドライバーに情報を提供する仕組みだ。2020年には機能をアップデートし、その時々の状況に応じてルートが再計算されるようになった。
同社のキャロル・B・トメCEOは、2020年の決算発表会でダイナミックプライシングの可能性についても言及しており、これにORIONが持つデータを活用するのだろうと想定される。
また、データ取得の方法も効率化している。同社では1日2000万回の手作業によるスキャンでデータを取得していたが、この時間と手間を短縮し、より詳細なデータを得るためRFID技術の導入を始めた。得られたデータはグーグルと共同で開発したHEATと呼ばれるツール(ORIONと連動)を使って分析する予定だという。