ビジネス

2022.08.21

「翌日」以外の魅力的な選択肢を データが救う配送の未来

Getty Images


物流サービス世界最大手のFedExは、創業者のフレッド・スミスが「荷物のデータは荷物と同じくらい重要だ」と考えていたことから、創業当初からデータドリブンな経営をしてきた。その象徴ともいえるのがFedEx Dataworksというデータ専門チームの存在だ。世界中で一日に出荷される1700万個の荷物のデータを各所でスキャンし、輸送の効率化、荷物の見える化を実現してきた。

2020年には、天候や交通状況を踏まえたリアルタイムの荷物の配送状況を把握し、必要があればオペレーションに介入できる仕組み「FedEx Surround」をマイクロソフトと共同で開発した。

「FedEx Surround」は、新型コロナウイルスのワクチンの配送においても活躍した。ワクチンの配送状況をすべてトラッキングし、配達の遅れや事故などが発生した場合には、別ルートを回る、代車を用意する、配送先に連絡するといった介入を行ったのだ。このことで、予定時刻での配達到着率は99.91%になったという。



先ず手を付けるべきはデータの収集と蓄積


これらの事例からわかるように、欧米ではデータを活用することで、柔軟な配送と同時に生まれる複雑性の管理の実現を目指している。では、日本で「柔軟な物流」を実現するにはどうしたらいいだろうか。まずは、徹底したデータの収集と蓄積が必要だろう。

荷物のサイズ、宛先、現在の場所などのデータは、画像認識やデジタルIDといったテクノロジーを活用して、収集・蓄積する。蓄積したデータはドライバーや車両の稼働予測を照らし合わせ、輸送可能なキャパシティを計算し、効率的な配送ルートやドライバー配置に反映する。

これができるようになれば、配送リードタイムや配送方法に柔軟性をもたせて、配送量の平準化により業務負荷を分散し、最大キャパシティでの運用を見込むことができる。

また消費者に対しても、飛行機のチケットの早割りや、賞味期限間近の食品のように、宅配便にも「翌日配達」以外を選択する際のインセンティブを用意すると良いだろう。

これは、企業向けのサービスに対しても同様である。例えば、水曜日の配送量が少ないことが事前に分かっていれば、水曜日に配送する荷物の料金を下げる。そうすれば、到着予定まで時間がある荷物は、水曜日に配送するといった運用ができる。これによっても配送量の平準化を期待できる。
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文=三井朱音

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