「熱感知技術」で自動ブレーキシステムが飛躍的に向上、夜間の機能低下を改善

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最も性能の高かったクルマは高解像度のカメラ、レーダー、改良されたソフトウェアなどを含む各メーカーの最新システムを搭載しているとエイラーはいう。

「何台かの車両がテストで好成績を収めたことに私たちは勇気づけられました。それ以外のシステムを使っているメーカーが改善してくれることを期待しています」

Teledyne FLIR(テレダイン・フリアー)の技術責任者、クリス・ポッシュは、彼の会社のサーマルイメージングナイトビジョン技術こそが、暗いところでの歩行者の保護を著しく強化する改善方法であると自信を持っている。

「ナイトビジョン(暗視)だけでなく、当社のサーマルカメラ(赤外線カメラ)は、クルマに搭載されている他のセンサーと連携してAEBなどの機能を実行します」とポッシュがインタビューでいう。「つまりこの高コントラストのサーマルイメージは、レーダーやLiDARと連携して使うことができるのです。そうそれば真に効果的なシステムを作ることができます」

Teledyne FLIRとVSI Labsは、2019年に共同開発を行い、サーマルカメラの利用を進めて、夜間に高性能を発揮する可視レーダーサーマル融合AEBシステムを開発した。

2020年にミシガン州イプシランティにあるAmerican Center for Mobilityで行ったテストで、FLIRのサーマル融合AEBシステムは「歩行者の負傷を効果的に防止する」テスト25項目中25項目に合格した。車両が接触した例は2回あったが、ソフト歩行者ターゲット(柔らかいダミー人形)を倒すことはなかったと同社の概要に書かれている。

商品化されているAEBシステム4種がテストされ、昼間のテストでは50項目のテスト中42項目に合格したが夜間の成績は悪く、2例を除くすべてのテストでターゲットに衝突した。



「レーダーとの組み合わせは、実に有効だと私たちは考えています。目に見える可視光を利用し、サーマルを利用し、さまざまなセンサーが豊富にあり、それに加えてレーダーによる立体情報が使えるのです。これこそがAEBの進化すべき目標だと思います」とポッシュは力説した。

Teledyne FLIRのナイトビジョンシステムは、すでに100万台以上の車に搭載されているが、AEBシステムとはつながっていない。

「可能性を秘めていると思います」とIIHSのデビッド・エイラーはいう。「おそらく歩行者だけでなく、動物との衝突などにも応用できるでしょう。私たちは格付け機関として、今後も高い目標を掲げていきます」

IIHSは、最も安全なクルマを選ぶ「Top Safety Pick」の総合テストの一環として夜間AEBテストをもう1ラウンド実施する意向で、結果は2023年早くに出る予定だとエイラーは言った。Teledyne FLIRシステムを搭載した量産車が市販されていれば、それもテストに含めるとエイラーはいう。

今日のAEBシステムが夜間における歩行者保護に不適切であると裏づけられたことで、まず頭に浮かぶのが政府主導による技術改善の必要性だ。
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翻訳=高橋信夫

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