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2022.05.17

カナダ発の自動運転スタートアップ「Waabi」が目指す物流革命

Getty Images

カナダのコンピュータサイエンティストのラケル・ウルスタン(Raquel Urtasun)が率いる自動運転テクノロジー企業「Waabi(ワービ)」は、物流トラックの自動運転技術の商用化に向けて、競合企業のベテラン社員たちを盛んに招き入れている。
 
トロントに拠点を置く同社は初期の段階では、AI(人工知能)を活用した高度な運転シミュレーターの開発に注力していたが、実環境でのテストに移行するにあたり、センサーやLiDARなどのハードウェアの知見を持つチームの拡大に乗り出した。
 
Waabiのハードウェアチームは現在、アップルの電気自動車プロジェクトに在籍していたEyal Cohenの指揮下で、ウーバーの自動運転部門出身のJorah Wyerや、オーロラ出身のJD WagnerとPaul Spriesterbachらが働いている。
 
「私たちの目標は、自動運転トラックを世界に届けることだ。そのためにハードウェアのチームが必要だ」と、Waabiの創業者でトロント大学のコンピュータサイエンスの教授でもあるウルタスンは語る。「将来的にはロボットタクシーやデリバリー分野にも進出するが、当面のところはクラス8の大型トラックに注力する」
 
Waabiの採用活動の強化は、創業間もない同社がフォーブスの「AI50」リストの2022年版に初登場したタイミングと重なった。AI50は、北米の最も有望なAI企業を選出するリストで、ウルタスンは昨年のこのリストの選考委員を務めていた。
 
Waabiという社名は、「ビジョンを持つ者」という意味のアメリカ先住民の言葉に由来する。2021年6月の8350万ドル(約108億円)の資金調達でステルスモードから脱出した同社は、AIで自動運転車をトレーニングする高度なシミュレーターを開発し、仮想空間でのシミュレーションを重ねることで、競合のウェイモやTuSimple、Auroraなどよりも、効率的にテクノロジーを進化させてきた。
 

需要高まるトラックの自動運転化技術


Waabiによると、同社のチームはWaabi Worldと呼ばれる閉ループシミュレータによる検証を重ね、自動運転トラックの開発を進めている。主に高速道路を走行する物流トラックは、混雑した都市部を走行する乗用車よりも、自動運転に適していると考えられる。さらに、トラックドライバーの不足が続いていることが、この分野の自動化ソリューションの需要を高めている。
 
Waabiは、トラック輸送のパートナーを探すため、2月にTuSimpleのバイスプレジデントを務めたビビアン・サン(Vivian Sun)を幹部として採用した。かつてウーバーの自動運転チームのチーフサイエンティストだったウルスタンは、どこの企業と提携する見込みか、実際のオペレーションがいつ始まるかについては言及を避けている。
 
「具体的なタイムラインはまだ明かせないが、非常に速いスピードで進んでいることは確かだ。競合他社に比べて遅れをとっているとは、全く思っていない」と彼女は語った。

編集=上田裕資

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