「人が自然に手を加える」気候工学が世界的な干ばつ対策には必要か

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もしそうなら、工業分野の企業は何十億ガロンもの有毒な廃水を処理するインセンティブが働くだろう。農家は牛肉やアーモンドのような水を大量に消費するものから、でんぷん質の根菜類や穀物のような水やカロリーの効率が良い作物へと移行するかもしれない。アパレル生産者は綿花に代わる、栽培に水をさほど使用しない作物を探すだろう。スポーツ施設、景観管理者、住宅所有者などは、使用量はさほど多くないもののスマート灌漑システムに注目するだろう。

ロサンゼルスは排水を100%リサイクルしようという真っ当な考えを持っている。2015年にビル・ゲイツが指摘したように、1300万人が住むロサンゼルス都市圏がMicrosoft(マイクロソフト)創業者の言葉を借りれば「人糞から作られた水」をもうすぐ飲むことになるとは誰が予想しただろうか? 実際、オランダの都市は50年以上前から水のリサイクルを実施してきた。ロッテルダムでは、ライン川の水を飲むときにはすでに少なくとも3人のドイツ人の体を通過しているというジョークがある。

水が不足しているときは騒いでいる場合ではない。貴重な商品であるかのように水を節約しながら使い、リサイクルし、そしてお金を払う必要がある。

2. 中期的な解決策:干ばつに見舞われた地域の水不足に備える


最も負担が少ない中期的な解決策は海水の淡水化、つまり工業規模で海水から塩分を除去することだ。これは沿岸部のどの国でも可能だが、エネルギーを大量に消費する。再生可能エネルギーや、できれば近いうちに核融合エネルギーで発電しない限り、水と排出量の増加を引き換えにすることになる。

もう1つの方法は、水が余っている地域から不足している地域へ水を運ぶことだ。南極の氷山を水不足の沿岸都市にもってくるのも1つの方法だ(真水を無駄にする必要はないだろう)。しかし、より現実的な方法は水をパイプで送ることだ。

長江から北京に水を引く600億ドル(約8兆7200億円)もの中国の南北水運プロジェクトは、長江が干ばつに襲われるまではその良い例だった。これに代わって、甘粛省の省都である蘭州市が提案したように、中国はロシアに水を求めてもよいだろう。同様に米国は五大湖やミシシッピ川流域から西部に水をパイプで送ることもできるし、比較的人口が少なく水が豊富なカナダの北部から送ることもできる。これはさらに議論を呼ぶ可能性がある。
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翻訳=溝口慈子

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