この2つの災害は、米国の社会経済構造に対して著しいストレス要因となりかねない。またこれらは、よりゆっくり進行し長期間続く干ばつと比べて散発的で、「話題になりがち」な出来事だ。
干ばつが、悪天候やハリケーンの脅威のように即座に生中継されたり、ソーシャルメディアのハッシュタグが作られたりすることはまれだ。それでも、干ばつも社会に大きな負荷を与えている。米国の西部で現在起きている干ばつは歴史的水準に近づいているものの、このことを認識さえしていなかった人もおそらくいるだろう。
米海洋大気局(NOAA)の国立環境情報センター(NCEI)は4月中旬に発表した報告書で、「長年にわたり米西部一帯に発生している現在の干ばつは、米国干ばつモニター(U.S. Drought Monitor)の22年にわたる歴史の中で、最も広域に及ぶ厳しいものだ」と指摘した。2022年の最初の3カ月間は、降水量不足が記録的水準に近づいていた。
米国立気象局の気候業務プログラムマネジャーであるビクター・マーフィーは4月16日、「南のペコスから北のクロスビーまでテキサス西部の19の郡では、1895年以降最も降水量が少ない9月から3月の時期を経験した」とツイートした。ちなみに、米国のグレート・プレーンズ(大草原地帯)で干ばつにより砂嵐が発生していた「ダストボウル」は1930年代で、1895年より後になる。
NOAAは「気候学的な雨季が西部の一部地域で終わり、積雪が平均以下で、貯水池が史上最低水準かそれに近い状態である中、干ばつの拡大と激化、水資源不足に関する懸念が高まっている」と指摘している。つまり、西部の給水量を補充する重要な時期は過ぎようとしていて、干ばつがこれからさらにひどくなるという兆しがあるのだ。これにより、どのような影響があるだろう?
米西部の干ばつが与える影響にはさまざまなものがある。米国内でも人口が多い都市部は一部が西部にあり、既に少ない給水量に頼っている。
また、米国の農業生産の多くはカリフォルニア州セントラル・バレーとグレート・プレーンズ(大草原地帯)に由来するものだ。
米農務省(USDA)のウェブサイトによると、グレート・プレーンズの8つの州の下に横たわるオガララ帯水層は「米国で生産される小麦、とうもろこし、綿、畜牛の5分の1近く」を支えている。この水源は、これまで約100万年にわたり地質学的作用で作られたものだが、この水が持続不能な速度で使用されている。