イタリアで歴史的な干ばつ トマトやオリーブオイルなど農産物の3分の1が危機的状況

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イタリアの歴史的な干ばつによって、同国の農産物の30%が危機的状況に陥る可能性があるという。同国のステファノ・パトゥアネッリ農相が13日に議員に警告し、オリーブオイル、アルボリオ米、トマトなど基本的な食料品の生産が脅かされていると述べた。

AP通信によると、イタリアは1921〜1950年と比較して、1991〜2020年に5分の1近くの水供給を失っていることが最新の政府調査で明らかになった、とパトゥアネッリ農相はイタリア代議院で説明した。

このデータは、イタリアが今後数十年の間に利用可能な水源を最大40%失う可能性があることを示唆している。パトゥアネッリ農相は「ゆっくりと、しかし絶え間なく水を浪費している」と表現した。

平均を上回る気温と雨不足がイタリア北部を流れる同国最長のポー川の流域にどのような影響を及ぼすかは、この地域が国の農業生産の3分の1を担っていることから特に懸念されるとパトゥアネッリ農相は述べた。

AP通信によると、干ばつはこの地域で育つ作物の栽培に悪影響を及ぼす可能性があるという。影響を受ける農産物としてパトゥアネッリ農相はトマト、トウモロコシ、米(ポー地域はリゾットに使われるアルボリオ米の主要産地)、そしてこの地域名産の生ハムなどを挙げた。

価格分析会社Mintecのマーケットアナリストであるカイル・ホランドはガーディアンに対して、イタリアのオリーブオイルの生産量は2021年に比べて20〜30%減少する可能性があると述べ、土壌の水分レベルが決定的に低くなっていると指摘した。土壌の水分レベルの低さについて、オリーブオイルの専門家は同紙にアプリコット、桃、洋梨の生産にも影響がおよぶ可能性があると語った。

イタリアの主要な農業団体Coldirettiによると、イタリアの農家は干ばつで30億ドル(約4140億円)を失った。また、ロシアのウクライナ侵攻のために農家は高騰するエネルギー価格にも直面していると指摘した。

イタリアは先週、ポー川流域とその周辺地域に非常事態を宣言した。ポー川の水位が過去70年で最も低くなったためだ。あまりに水量が少ないため、3月には第二次世界大戦中にドイツ軍が退却する際に川に捨てた軍車両が乾いた川底に再び姿を現した。

イタリアでは干ばつが周期的に発生するが、調査によると今後数年間はより頻繁に発生し、「これまで以上に破壊的な結果をもたらす」とパトゥアネッリ農相は13日に述べた。また、干ばつの影響はイタリアの貧弱な水インフラによってさらに大きくなっており、飲料水の42%は主に古いパイプのために失われていると推定されると付け加えた。

同国のドラギ首相は先週、気候変動が干ばつを引き起こしていることは「間違いない」と述べた。同国ではつい最近、アルプスで氷河の融解による雪崩が発生し、11人が死亡した。

翻訳=溝口慈子

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