──「小さいことである強さ」を活かしていくということですね。そのようにブルーオーシャンへ向かってスモールスタートできたことが今の飯尾醸造にとって大きな変化でしたか?
というより、もともとスモールだったことが大きいですね。また、一度使えばリピートしてくださる個人のお客様が非常に多かった点は有難かったです。
一方で、飲食店ではなかなか使ってもらえないことが先代からの悩みでした。そこで私の代で「富士酢プレミアム」という商品を開発したのですが、それがいろいろなトップレストランで使って頂けるようになったのです。
その過程で、「お酢はストックビジネスだ」と気付きました。
たとえば、お酒などの嗜好品はどれも売り切り型のフロービジネスで、一晩でブランドチェンジが繰り返されることも少なくありません。一杯目はビール、二杯目に日本酒のように。その点、お酢は一回気に入られればずっと使ってもらえます。
20年来夢見てきた究極のお酢を開発
富士酢プレミアム(左)と純米富士酢(右)
──「富士酢」を愛用しているお店を調べると、国内の有名店のみならず世界中にありますね。こうした超一流シェフたちからここまで愛されるようになったきっかけや理由は何だと思いますか?
まず先ほどの「富士酢プレミアム」という新商品を開発したことです。
これは飯尾醸造が20年来夢見てきた「大吟醸のように繊細で、しかも旨みがあるお酢」で、原料には地元京都・丹後の山里で農薬不使用栽培をしているお米を使用しています。
さらに昔ながらの古式「静置発酵」と「長期熟成」をさらに極めた造りにこだわり、やさしい香り、穏やかな酸味、そして円熟の旨みが堪能できる、まさに極上の純米酢と言えるものです。
それを銀座の「天ぷら近藤」さんという14年連続でミシュラン2つ星に輝く超有名店に持って行った際、店主の近藤さんに「これからも使わせてほしい」と言っていただけました。それで箔が付いたのがまず一つです。
お酢の活用の仕方を鮨職人らにシェアする「世界シャリサミット」も主宰
そして同じくミシュラン2つ星を獲得した「すし㐂邑」さんも火付け役になってくださいました。そこで使われているお酢ということで、他のお鮨屋さんがうちの酢に興味を持ち始めてくださったのです。