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2022.10.04 09:30

垂直農法と実験室製の牛肉、中東で「未来の食料」への投資が進む


エミレーツ航空のシェイク・アーメド・ビン・サイード・アル・マクトゥーム会長は7月にBustanica施設がオープンした際「長期的な食料安全保障と自給自足はどの国の経済成長にも不可欠であり、UAEも例外ではない。耕作地や気候に制約のあるこの地域では特有の課題があった」と指摘した。

クルマで1時間ほど離れた隣の都市アブダビでは、GreenFactory Emirates(グリーンファクトリー・エミレーツ)が世界最大の屋内農場を建設中で、年間約1万トンの生鮮を栽培することができるという。

アブダビ投資局(ADIO)は2020年に、世界の農業テクノロジー(アグリテック)企業を誘致するため、約5億UAEディルハム(約200億円)相当のインセンティブ策を発表した。誘致企業の中には垂直農法の米企業Aerofarms(エアロファーム)や灌がい専門企業のRDIが含まれている。

昆虫と牛肉


他の投資家はよりエキゾチックな選択肢を模索している。カタール投資庁は9月、フランスのバイオテック企業Innovafeed(イノバフィード)の2億5000万ユーロ(約350億円)の資金調達ラウンドに参加した。同社は昆虫由来のタンパク質を生産し、世界最大といわれる昆虫飼育の屋内農場を運営している。

昨年7月には、アブダビを拠点とするアブダビ政府系ファンドの一部門、DisruptAD(ディスラプトAD)がイスラエルのスタートアップAleph Farms(アレフファーム)に1億500万ドル(約150億円)を投資した。Aleph Farmsは二酸化炭素排出ゼロの培養牛肉を使った代替品を開発している。

サウジアラビアのこの分野で最も積極的に活動している1人が、王室のメンバーで、同国で最も有名な実業家であるアルワリード・ビン・タラール王子の息子であるカレド・ビン・アルワリード・ビン・タラール王子だ。

ドバイを拠点とする王子の投資会社KBW Ventures(KBWベンチャーズ)は近年、食品事業への投資を相次いで行っている。その中には、細胞培養食肉を開発するUpside Food(アップサイドフード)やBond Pet Foods(ボンドペットフード)、Beyond Meat(ビヨンドミート)、Ripple(リップル)、TurtleTree(タートルツリー)など食品関連企業への出資が数多く含まれている。

農業そのものの起源と呼応するように、イスラエル企業は湾岸諸国の食品生産産業で大きな役割を担っている。UAEなどイスラエルとの関係を正常化した国々でその傾向が強まっているが、サウジアラビアなど他の国々でもイスラエルのアグリテック企業が関与しているとの報道もある。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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