極めて気温が高く、水資源に乏しい乾燥地帯で育つ作物は限られている。そんな過酷な環境に対応できる数少ない植物がナツメヤシだ。乾燥地農業研究国際センター(ICARDA)によると、アラビア半島のナツメヤシの栽培面積は約36万5000ヘクタール(約3650平方キロメートル)で、世界の3分の1を占めるという。
他の作物の栽培を試みてもうまくいかないことがある。例えば、サウジアラビアは過去に小麦の栽培を試みたが、コストが高くつき、貴重な地下水の無駄遣いになることがわかった。政府が方針を転換し、2015年から2018年にかけて同国の小麦生産量はほぼゼロになったが、最近になって再び増加傾向にある。
ほとんどの湾岸諸国は食料を大量に輸入しなければならない。コンサルティング会社Strategy&(ストラトジーアンド)の推計によると、湾岸協力会議の6カ国(バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦)は穀物の93%、肉の62%、野菜の56%と、食料の約85%を輸入している。
これらの国々が「世界の食料安全保障指数」で大きく順位を落とすことがないのは豊かな富のおかげだ。また、食料供給を確保するために海外の農地に投資してもいる。しかしこうした投資は慎重に管理しなければ、地元住民と対立する可能性がある。
未来の食料
湾岸諸国の農業は現在、新たな勢いを得ているようだ。そうした国々の投資家は培養牛肉から垂直屋内農場まで、より革新的な製品や技術に資金を投入している。
アラブ首長国連邦(UAE)のドバイでは2022年初め、アール・マクトゥーム国際空港近くの広大な敷地に世界最大の垂直水耕栽培農場がオープンした。33万平方フィート(約3万660平方メートル)の敷地に広がるこの施設では、従来の農業よりも95%少ない水で年間1000トン超の葉物野菜を生産することができる。
この施設で栽培されているのはレタス、ホウレンソウ、ルッコラなど。一部は「Bustanica(ブスタニカ)」というブランドで近隣のスーパーに並ぶ予定だ。しかし多くはエミレーツ航空をはじめとする航空会社の機内食に使用される。