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ディープ・テックが変える食と都市

photo by GettyImages

6月、ニューヨーク市内でミーティングを済ませ、ウーバーで20分ほどの距離にあるブルックリンに向かっていた。Square Rootsと意見交換をするためだ。

Square Roots Urban Growersはブルックリンのブロードウェー・トライアングル脇に拠点を置く、2016年創業の都市型農業で代表的なスタートアップだ。共同創業者で会長を務めるのは、テスラやスペースXで知られるイーロン・マスクの弟、キンボル・マスク。かつて兄弟でZip2社を共同経営し売却したのち、食に関する取り組みを15年以上続け成功を収めてきた。

彼らのユニークな点は、輸送用コンテナの中で“野菜を垂直方向に生産する”独自の仕組みを持っているところ。その中で全て完結するので、場所に困ることなく、空き地や建物の屋上でも野菜生産が可能という点を売りにしている。水の使用量は土耕栽培の5%程度、かつ生育速度も早い。

食や農業分野でのテクノロジー投資はアメリカを筆頭に世界的に加速しており、その額はこの3年で1兆円を超える。食料不足や安全性を解決する上で、植物工場は特に注目の的だ。ソフトバンクなどが約200億円を投じたPlentyやSquare Rootsは「人工光型」、年間300トンを生産するGotham Greenは「太陽光型」のシステムを持つ。

バイオテクノロジー関連の大学発スタートアップを共同経営している仕事柄、事業開発やカンファレンスのため様々な都市を訪れるが、この領域の問題意識は海外の方が根強いことを身を以て感じている。

若者を魅了する「クール」な農業

その日の夜、Square Rootsでは一般向けの見学会も開かれていた。印象的なのは、コンテナから発せられる紫のLED。見学者はコンテナが開かれるとワッと声を上げる。長く西海岸のIT業界で活躍したエンジニアたちが、今はこの東側で働き、観衆に説明をしている。さながら深夜のライブ会場のようである。



集まっていたのは業界の関係者だけではない。驚くことにカップルやファミリーが多い。情報感度の高い若者中心ではあるが、老若男女問わず、参加者は優に200人を超えていた。

冷静に考えれば不思議なことではない。自分たちの口に運ぶものが、どのようなところで作られているかに関心が高い証拠である。植物工場という管理された環境で作られる野菜は、ここでは「安心・クール・美味しい」と受け止められていた。正直、これまでの私はあまり持ち合わせていない感覚であったが、足を運んでみると納得感がある。

さらに面白いことに、群衆の中にはレストランシェフたちも見受けられた。実際、色・形・味などのニーズに応じて生産された野菜やハーブ、エディブルフラワーは、高級レストランで使われることが多い。世界屈指のレベルを誇るニューヨークであればなおさら、味ももちろんのこと、見た目の均一さへの関心も高いというわけだ。

同日にランチをご一緒した医者であり食に取り組むドクターシェフ、Dr. Robert Grahamも植物工場には熱い眼差しを送っていた。

文=本多正俊志

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