ビジネス

2022.10.03 18:00

地元の夢を乗せた独自品種の発見、レイズトレードで広がる夢


「リッキー(高橋さんの愛称)のおかげで、だんだんと良いチョコレートができていっている。将来的には、自分のチョコレートブランドを持ちたい。そして、いずれは自分たちの独自品種のカカオで作ったチョコレートを世界に届けたい」とオルギンさんは目を輝かせる。

農場を見学した後、オルギンさんは高橋さんと筆者を自宅に招いてくれ、「少し前に、首都キトにまで自分のカカオ豆を運び、ローストしてクーベルチュールチョコレートを作ってもらった」と、試作したボンボンショコラを振る舞ってくれた。



また、海外で自分たちのチョコレートが食べられている、ということは、若い世代のモチベーションにもなっている。元々が農業国で、農業が大切な産業として認められているエクアドルの、文化的な背景もあるのだろうが、組合員の全員が「後継者問題は存在しない」と口を揃える。

組合員の娘である、24歳のレベッカ・エレーラさんも、その一人。地元サン・ドミンゴ県の大学で牧畜と農産を学び、いまは家族と共に、カカオ栽培に携わる。「家族の仕事を引き継いで、世界から評価されている独自品種のカカオの生産を積極的に行っていきたい」とはにかみながら語ってくれた。

キトから70キロほど北東の、カヤンベという街にある、ノエル・ベルデの工場を見せてもらった。

高橋さんは、チョコレート会社大手を経て独立し、仲間たちとチョコレートブランドを立ち上げたエクアドル人、ダニーロ・バレンシアさんとパートナーシップを組み、レシピを渡してノエル・ベルデのチョコレートを作ってもらっている。香りの良い独自品種の、多様で繊細な味わいを壊さないように、冷やした石のローラーで短時間のうちにペースト状にするなど、独自の工夫がされている。



ノエル・ベルデのチョコレートは、「エクアドルの農と共に育つブランド」としてだけでなく、その味も評価され、今年7月には、イギリスの専門家によって設立されたチョコレートのコンクール、アカデミー・オブ・チョコレートで銀賞と銅賞を受賞した。

「全ての工程をエクアドルで行うことで、売り上げの多くが地元に還元される。このエクアドルで、カカオ豆の栽培から、チョコレート製造までを行う人たちが増えれば、農業、そして独自品種のカカオの多様性を守ることができる」と高橋さんは考えている。

文・写真=仲山 今日子

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