2014年、イーロン・マスクが創設して話題となった「アド・アストラ」のその後を本邦初取材。「スペースX」内で行われていた実験的授業が、世界各地から受けられる!? 次世代をつくる教育の全貌が明らかに。
2014年、イーロン・マスクがスペースX内にアド・アストラという学校を創設したことが話題になったが、その後をご存じだろうか?
アド・アストラは、Ars Technicaの記事によれば、マスクが5人の息子を地元ロサンゼルスの私立学校から引き上げ、その学校の教師のひとりジョシュア・ダーンを引き抜いてスタートした学校で、主にスペースXのスタッフの子どもたちや地元に居住する子どもたちが科学技術を中心に学んでいた。
2020年、詳細は語られていないが同校は閉鎖され、マスクは学校運営から離れたが、そのレガシーは、ダーンが全世界の10〜14歳の子どもたちを対象にした実験的なオンラインスクール、アストラ・ノバを創設して受け継がれている。同校では、どんな考え方の下で、どのような実験的教育が行われているのか? ダーンと同校で教鞭をとるローズマリー・ロード博士に話を聞いた。
“Make it great”
これはイーロン・マスクが学校を運営するうえでよく口にしていた言葉だ。ダーンも常に自問している。“Is this great?”。そこから生まれてきたのが、アストラ・ノバが提供している実験的な教育法だ。それは明らかに通常の学校のカリキュラムとは異なっている。生徒が、学校側から与えられるカリキュラムに従って受動的に学ぶものではなく、生徒がリードして選択し、思考し、判断することを通して能動的に学んでいるからだ。
まず、6〜12人で行われる授業は、選択肢が多い。生徒は、各時間帯で、3〜12の選択肢のなかから好きな授業を選ぶことができるのである。科学の授業を中心に取ることもできるし、10歳の生徒でも12歳の生徒が受ける授業を受講できるなど年齢制限もない。「多数の選択肢を提供することは、生徒に主体性を与える機会になる」とダーンは話す。
“コナンドラム”というユニークなプログラムも提供している。コナンドラムとは一言でいえばクイズのこと。生徒にあるクイズを出し、その解答を3〜7つの選択肢のなかから選ばせ、なぜその解答を選んだのか議論させるのである。それにより、論理的思考力や決定する力を養うことができるという。