パタゴニアが保有するすべての無議決権株式(全株式の98%)は、新たに設立された非営利団体の「ホールドファスト・コレクティブ(Holdfast Collective)」に移管され、その資金は自然や生物多様性の支援と「環境危機との戦い」に充てられるという。
同社の議決権付き株式は現在、パタゴニアのパーパスとバリューを明確にし、「資本主義が地球に貢献できることを営利事業で実証するための新たな組織」とされる「パタゴニア・パーパス・トラスト」が保有している。パタゴニアは、業績に応じてホールドファスト・コレクティブに年間約1億ドルを支払う予定だが、この資金の具体的な用途は明かされていない。
シュイナードは公開書簡で、会社を売却してその収益を寄付することや株式の公開も考えたが、従業員の雇用とパタゴニアの価値観を維持するために所有権を手放したと述べている。同社のCEOのライアン・ゲラートは今後もそのポジションに留まり、シュイナードの一族は引き続きパタゴニアの役員会メンバーで居続けるという。
シュイナードは、この件を最初に報じたニューヨーク・タイムズ(NYT)に対し、「この取り組みは、うまくいけば、少数の富裕層と大勢の貧しい人々という構図に帰結しない、新たな形の資本主義の形成につながる」と語った。「我々は、地球を救うために積極的に活動している人たちに、最大限の寄付を行う」と彼は付け加えた。
フォーブスは、会社の経営権を手放す前のシュイナードの保有資産を12億ドル(約1700億円)と推定していたが、彼はもはやビリオネアではない。
富豪リストへの掲載が「腹立たしい」
シュイナードはNYTに対して、彼が会社を手放した理由の一つは、フォーブスの億万長者リストに掲載されたことだと説明した。「私は銀行に10億ドルも預けていないし、レクサスにも乗っていない」と、彼は述べ、このリストに載ることが「本当に腹立たしかった」と語っている。
フォーブスは2017年に初めて、シュイナードを「世界の富豪ランキング」に加えたが、それはパタゴニアの企業価値をベースに彼の保有資産を10億ドル以上と推定した結果で、彼の銀行への預け入れ額に基づくものではなかった。
1973年にパタゴニアを創業したシュイナードは長年、環境保護運動に力を注ぎ会社の売上の1%を寄付してきた。同社は2018年には気候変動と戦う団体に1000万ドルを寄付していた。
パタゴニアは昨年、人気の企業ロゴ入りベストの販売を停止すると発表したが、その際に企業ロゴがデザインに含まれることで 「衣服の寿命が短くなる」と主張していた。同社は2011年のブラックフライデーの広告で、顧客たちにパタゴニアの衣類を購入しないよう呼びかけ、すでに持っているアイテムを再利用するか、修理して着るよう求めていた。
(forbes.com 原文)