パタゴニアが日本酒、なぜ? 初の「日本発」商品にかける思い

パタゴニア、初の「日本発」はなんと日本酒 (C)寺田本家

アウトドアウェアメーカー・パタゴニア創業者のイヴォン・シュイナードはもともと彼自身がロッククライマーでクライミング用の道具を売っていたが、1968年にアウトドア用のファッションの製造・販売に事業を拡張して世界的に成功した。

近年において、同社は環境に配慮する企業として知られるとともに、新たな事業展開も行っている。2021年には、国内初となる中古品を専門販売するポップアップストアを、同社が渋谷に期間限定でオープンしたのは記憶に新しい(現在は閉店)。


「パタゴニア プロビジョンズ」という新施策



Taro Terasawa(C)2022Patagonia, Inc.

そんな同社が、アウトドアウェア事業のほかに、食品事業も手がけているのはご存知だろうか。同社は2012年から食品事業「パタゴニア プロビジョンズ(Provisions)」を展開し、生産農法にこだわったシーフードの缶詰やオーガニックスープ、スパイス、クラフトビールにワインなどを販売している。同社がこだわっているのは、持続可能な農法のさらに先をいく「リジェネラティブ・オーガニック農法」。食品の生産において、傷ついている地球をさらに痛めつけるのではなく「修復」することを取り入れるというものだ。そんなパタゴニア プロビジョンズ初の「日本発」商品として、日本だけでなくアメリカでも販売されているのが、「自然酒 五人娘」だ。


Taro Terasawa(C)2022Patagonia, Inc.

パタゴニア プロビジョンズと寺田本家の理念には、通底するものがある。「自然酒 五人娘」は寺田本家の看板商品「五人娘」をベースにしたものだ。蔵内にすむ蔵付き酵母や自家培養の麹菌が使われ、自然の恵み・生命のエネルギーを最大限に生かして微生物の働きを助ける、人工的な手法をできるだけ排除した酒造りが貫かれている。自然の力をうやまい、自然から奪うのではなくその力を活かして土壌を豊かにするスタンスはまさに、パタゴニア プロビジョンズの他の食品の製造プロセスと通ずるものだ。同社米国本社が寺田本家を探し出してきたというのも頷ける。

また、「自然酒 五人娘」には、パタゴニア プロビジョンズ独自の「冬期湛水(たんすい)水田」などの手法を用いて育てたコシヒカリが原料米の一部として使われている。

魅力は、オーガニックな米の旨味


産地特有の生きた風味を存分に活かした、「自然酒 五人娘」。同社と同じく環境に配慮する消費者なら、商品を消費する際に商品製造において環境に負荷がかかったどうかを憂うことなく、オーガニックな米の旨味を安心して味わえるのも魅力だ。


天然素材の新鮮な米の旨味が生きる。(C)寺田本家

そんな「五人娘」、開栓すると、米の甘みを感じさせる香りが漂う。やや癖のある香りを苦手と感じる人はいるかもしれないが、味はフルーティーで酸味のバランスが良く、後味はスッキリ軽快。自然の微生物が醸した甘みと深みが感じられる日本酒だ。


(C)2022Patagonia, Inc.

五人娘(寺田本家)

720ml/1650円
※パタゴニア直営店、パタゴニア公式サイトで販売

文=高以良潤子 編集=石井節子

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