36あるコナンドラムのなかでも人気のある、NASAに関するコナンドラムでは、「NASAは何に投資すべきか?」というクイズを出し、その解答として、宇宙船、望遠鏡、地球調査など7つの選択肢を提示、生徒はそのなかから解答を選択し、ほかの生徒が選択した 、相反する意見も考慮しながら建設的な議論を行う。
選択肢が現実に即したものであることもユニークだ。ダーンは実際にNASAの予算を見たうえで、NASAが現在チャレンジしている取り組みからインスピレーションを得て、選択肢を考案した。
「選択肢は誰が選択してもおかしくないものに決めています。誰も選択しないような選択肢からはよい議論が生まれないからです。また、生徒は自分はいったんある選択をしても、議論するなかでよりよい意見に出合ったら判断を変えることもできる。コナンドラムは思考や推論をすることを重視しており、決して正しい答えを求めてはいないのです」
コナンドラムは自分の考えをオープンに表明できる場とあって、生徒から「次はいつやるの?」という声が上がるほど好評のプログラムだという。
生徒たちがチームになってコラボレーションしながら数多くの決断を行う“シンセシス”というゲームプログラムも提供している。例えば、“アート・フォー・オール”というゲームでは、生徒たちにオークションを通して購入させたアートコレクションで、世界各地で美術展を開かせるコンピュータゲームだ。
生徒はバランスの取れたアート作品を、オークションを通して獲得し、数多くの来場者が来て最大の収益を得られるようなコレクションにすることを目指す。アド・アストラでも行われていたこのゲーム。スペースXでは、実際に生徒がボードをあげてオークションの疑似体験もしていたという。「人は協力する生き物。何より、子どもたちはチームで取り組むことで得た気持ちをずっと忘れないでしょう」とダーンは語る。
各界のエキスパートを教授陣に
教授陣にはさまざまな分野のエキスパートを全米各地から採用、将来は海外から採用することも視野に入れている。科学を教えるロード博士はカリフォルニア工科大学の化学博士で、バイオテクノロジーの研究所も運営。建築事務所を開いている建築士もいる。エキスパートが教えることを重視しているマスクの姿勢に倣ったものだ。
「エキスパートはその分野の問題や現状、新しい情報、これからの方向性について精通しており、未来予想図を描くことができる。その分野の経験がある人が教えているとは限らない、通常の学校では得られない貴重な体験を子どもたちはすることができるのです」
フルタイムの教師は7人いるが、毎学期、15人の教師を別に加えているため、常に新しい授業が提供されているところもユニークだ。生徒たちにとっては、選択した授業がどんな授業になるか常にミステリーとなる面白さがある。
「教師には、その分野の専門知識だけではなく、クリエイティビティも求めています。教師は“求められている以上のことをしたい、もっと学びたい”と生徒が思うような、学習意欲を刺激する雰囲気を生み出すことが重要だからです」