闇の中、ニックネームで呼び合って──
それぞれの体験を持ち寄って集まった夕方のワークショップ会場。再びシャッフルして4グループに分かれ、UNIVAの野口晃菜さんをファシリテーターに迎え、対話が進む。このワークショップの目的は、「多様性を尊重するために、教育はどうあるべきか」 を話し合うこと。最初に個人の感想、実感をシェアするところからスタートした。
第2部 イベント体験後のワークショップの様子(写真提供=ベネッセこども基金)
その場には、教育委員会職員、小学校の教員などさまざまな立場の人が混在していたものの、第1部の『ダイアログ・イン・ザ・ダーク』と『地図を持たないワタシ』の体験では自由なニックネームで呼び合うため、互いの肩書きは不明だ。 教員か教育委員会職員か、どの自治体から参加していたのかもわからないままにイベントを体験する。この「対等な関係性が、対話の重要な土台となった」という意見が多く出された。
体験前は緊張気味に敬語でやり取りしていた参加者も、体験を終えると生き生きとした表情に変わる。初めて出会った大人同士でも、ニックネームで呼び合い90分の旅を共にすることで、何かを成し遂げた仲間のような空気に変わる。
『ダイアログ・イン・ザ・ダーク』では、どこに向かうのか、どんな場所が待ち受けているのかもわからない暗闇のなかで初めの一歩を踏み出さなければならない。詳しい内容はこの記事には記載できないが、頼りになるのは物音や声などの聴覚、そして微かな匂いや気配、そして、触れてみること──。
「最初は暗闇で不安になったが、知らない人ばかりなのに人の温かさを感じた」「はじめての人といろんなものを超えて話せた」「顔も名前も知らないところで参加することはアウェイ感を感じて難しかったが、終わったら距離が縮まっていた」「対等に対話することの大切さを感じた」という感想がシェアされた。
一転、明るい場所で、1人のマイノリティ・キャストと
一方、『地図を持たないワタシ』は明るい場所で繰り広げられる。聞こえない人。見えない人。LGBTQ。車いすの人。低身長の人。義手の人。さまざまなマイノリティのうち、ひとりのキャストと対話しながら、グループの仲間と共に8つの部屋に用意されたゲームを解いていく。唯一のルールは、「誰ひとり取り残さないこと」。冒険を通して常に全員で語り合い、答えを決めて進んでいく。そのためには対話が欠かせない。
「誰ひとり取り残さないこと」というルールが守られる環境の中では、「目が見えない、音が聞こえないなどもネガティブなことではなく、"人のつながりには何の障害にもならない"ということを実感した」という感想も。また、「誰ひとり取り残さない」は学校や教育現場ではよく使われる言葉だが、「形だけの言葉になっていないか、実際にできていただろうか」と振り返る教員もいた。