暗闇は全部知っている。『ダイアログ・イン・ザ・ダーク』に教わること

写真提供=ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ

あなたは、完全に光を遮断した「純度100%の闇」を体験したことはあるだろうか。電気を消した部屋よりも、夜の森よりもさらに暗く深い闇。視覚優位のこの社会で、「何も見えない」状態に置かれたとき、自分がどのように感じ、どのように行動できるのかを想像してみてほしい。

どんなに目を凝らしても全く何も見えない状態で、私たちは数人のグループになって白杖を手に足を進めなければならない。アテンドをしてくれるのはトレーニングを重ねた視覚障害者。情報の大半を得る手段として普段頼っていた視覚が使えないとき、私たちは一体、何を頼りにどこに向かって進めばいいのだろうか──。

日本でインクルーシブ教育の実践に取り組んでいる全国の5つの自治体、大阪府、大阪府箕面市、広島県、埼玉県戸田市、東京都狛江市から、教職員・教育委員会職員ら18名が、この夏、東京・竹芝に集まった。公益財団法人ベネッセこども基金、一般社団法人UNIVAの共同実施によるワークショップ「障害理解教育はどうあるべきか」に参加するためだ。

第1部は、ともに「ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ」が主宰する、『ダイアログ・イン・ザ・ダーク』 と、新しいリアル対話ゲーム『地図を持たないワタシ』というふたつのイベント体験。


イベント体験前の待機スペースで(写真提供=ベネッセこども基金)

前者は、これまでに世界50カ国以上で開催され、900万人を超える人々が体験している「純度100%の闇」で対話を行うもの。後者は、宇宙船のクルーという設定の中で、いくつものミッションを果たしながら社会にはさまざまな人がいることを肯定的に体感する対話ゲームだ。


「純度100%の闇」で対話を行う『ダイアログ・イン・ザ・ダーク』 。前室で白杖の使い方を教わってから暗闇に足を進める(写真提供=ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ)

第2部では、それぞれのイベントを通しての個人の気づきをシェアしながら、「障害理解教育はどうあるべきか」「これから教育現場で何ができるか」についてさらに対話を行った。

今回は、 第1部の体験をシェアした第2部での実際の声を中心にレポートしたい。
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文=太田美由紀

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