「私は見られなければならない」 エリザベス女王が貫いた完璧なプレゼンス

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エリザベス女王が着用していた服の色は、彩度も明度も高めだ。彩度が高いというのは、色が鮮やかで混ざり物で濁っていない透明度の高い色、明度が高いというのは、明るさの度合いが高い色を指す。天然色を白から黒のスケールに置き換えた時、より白側に近い色だ。

彩度が高い色は、鮮烈な印象を与え、明度が高い色は、明るい光を纏ったような印象を与える。人の視線を瞬時に集める、それは形でも素材感でもなく、色の効果である。視覚情報において情報伝達力が最も早い「色」を、エリザベス女王は完璧なまでに取り入れていらした。


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エリザベス女王が好んだ色、好まなかった色


2018年デイリー・メールが行った調査「1年を通して女王が最も多く/また最も少なく身につけた色」から、VOGUE誌が分析を行ったデータがある。

それによると、エリザベス女王の最も着用頻度が高かった色はブルー系で、着用率は29%。次に頻度の高かった色はグリーンとクリーム色で11%、ピンクとパープルは10%の頻度で着用していたそうだ。

反対に、最も着用頻度の低かった色はベージュで、1%しか着用していない。また、ブラックも頻度が低く2%。他にも、レッド、オレンジ、イエローの着用は4%だったそうだ。

この着用頻度をエリザベス女王の「好み」と考えるのには非常に抵抗がある。ご本人の個人的感情における好みではなく、女王として王室や国を背負った姿勢を見せて信じてもらうために、その日・その場・その時にあるべき自分の姿を表現するために「好んで選んだ」ということだと理解している。

そしてブルーを多用していた最大の理由は、イギリス王室の公式カラーがロイヤルブルーであることに他ならないのではないだろうか。ロイヤルブルーとは、鮮やかさの中に深みのある、ほんの少し紫みを感じる青色で、1892年に英国王室の公式カラーとなった。

また一般的にブルーは、知性、落ち着き、信頼感、誠実さを表し、この色を嫌う人は非常に少ないとも言われている。「自分を見て信じてもらうために」の女王の言葉がここでも合致してくる。


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それに次ぐ、グリーン・クリーム、ピンク・パープルも、(クリームを除き)青みが含まれており、冷静さと潔さを感じる色だ。これらの色をエリザベス女王の写真で確認してみると、青味があり、鮮やかさがありながらも、少々白が加わった柔らかさと明るさを感じさせる色の物が多い。それらは、女王ご自身の肌・髪・瞳の色素の特徴ともマッチし、服だけでなく、着用しているご本人もさらに映える効果を発揮していた。

また、女王のお人柄や内面的特徴とも合致していたのだろうとも推測する。直接接する機会など当然なかった筆者には、お話をされている映像や記述されたもの、伝え聞くエピソードを踏まえた分析となるが、クリーム色に関しては、平時における白系の服の色と位置づけられるため、グリーンと共に多めに着用されていたと思われる。
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文=日野江都子

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