「私は見られなければならない」 エリザベス女王が貫いた完璧なプレゼンス

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エリザベス女王は、全身同一色のカラフルな色の服を着ていることで世界的に知られている。

帽子も常に、服と同色。服の形は決してスタイリッシュではないが、色のインパクトが強い分、形は特徴的すぎず直線的で裾にむかって少々広がり気味のラインを描いたクラシックなタイプを踏襲しており、そのバランスの取り方に知性と品性があふれている。


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その定型に近いような型(スタイル)をカラフルな色を変えながら繰り返し、人に見られ続けることで、子どもから老人まで、誰がその姿を見ても「エリザベス女王であること」を認識させるところまでに落とし込んだ。たとえお顔が見えなくとも、だ。

そのあり方は、トップリーダーにおけるプレゼンスマネジメントとして天才的だとしか言いようがない。

カラフルな色の服を着ていた理由


「それは、エリザベス女王がどこにいるか、誰もが一眼でわかるようにするためだ」

ドキュメンタリー映画『The Queen at 90』の中で、ウェセックス伯爵夫人のソフィーさんがこのように説明している。

「イギリス女王として、また国家元首として、人ごみの中で目立たなければならないからです。"女王を見た"と人々が言えるように、彼女は目立つ必要があります。彼女がどこかに現れると、群衆はどんどん増えていく、女王が通り過ぎる時に、誰かが『女王の帽子を少し見た』と言えるようにすることを忘れてはならないのです」と。

まさに、前述の女王の伝記の中で書かれていることと合致する。見られるための方法に、色がどれだけ効果的であるかを熟知していらっしゃったわけだ。


2016年6月、誕生日セレモニーにて / Getty Images

その色は、危機管理の面においても役に立つ。目立つと狙われやすくなるという面もあるが、護衛するボディガードたちが、群衆の中でも女王の所在地を簡単に見分けられるようにするためとも言われている。中途半端に地味にしたところで、女王を狙うほどの準備をしている人間には大した目眩しにもならない。だとしたら、完全に姿がさらされた状態の方が、護衛側も守りやすい。

従って、「ロイヤルと接するときのマナー」の一つに、「いかなるセレブリティも女王よりも目立つ色のものを着てはならない」という事柄があると言われているくらいだ。
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文=日野江都子

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