あまりにも多くの食品が、脂肪フリーや糖質フリーといった「何々を含まないこと」を売りにしている時代にあって、シンプルミルズは、製品が「何であるか」や、その材料がどう育てられているかを宣伝している。
同社のウェブサイトには、こんな言葉が掲げられている。
「当社の製品は、『何かからの脱却(フリー)』のさらに先、つまり、『もっと多くのことのために』をめざしています。シンプルで誠実であるだけでなく、目的意識を持ち、栄養もたっぷりあります。あなたは、あなたの食べるものでできているのです」
創業者のカトリン・スミスは、以前は経営コンサルタントとして、忙しいがあまり健康ではないライフスタイルを送ってきた。そんななかで食生活を変えようと決意したところ、健康が劇的に改善した。
その体験に着想を得て、ヘルシーだがおいしさは変わらない、クラッカーやクッキーなどの食品の提供に特化した会社を興した。
2012年にスミスの自宅キッチンでスタートしたシンプルミルズは、わずか6カ月後の2013年には、アマゾンでもっとも売れているマフィンミックスを提供する会社になっていた。ほどなくしてシンプルミルズは、高級スーパーチェーン「ホールフーズ・マーケット」にも進出した。現在では、40種類の品目(SKU)を扱い、2万5000店舗で製品を販売している。
会社が発展するのにあわせて、シンプルミルズは「革新への3つの道」を打ち出してきた。
第一の道は、農業と食の多様化に向けた「遊び場」と同社が呼ぶものだ。これは具体的には、農家が関心を持っているがあまり注目されていない作物の集まりを指す。
この「遊び場」により、生産者がそれぞれの農場のレジリエンス(適応力)を高めるのに役立つ食材に対する市場の需要を生みだせる。さらに、消費者が食の多様性を高めるのを後押しすることもできる。
こうした食品の例としては、そば粉、栗、スイカの種などがあり、シンプルミルズのクッキー「Sweet Thins」では、ナッツや種子のブレンド粉の一部として使われている。