ただし、この流麗なアニメーションを、通知や割り込みがくるごとにしょっちゅう動かすと、それだけで電力消費を増やしてしまうことは想像に容易い。
そこでA16 BionicにはDisplay Engineといわれるディスプレイ駆動のコントロールを行うカスタムプロセッサを用意し、リフレッシュレートの可変(1〜120Hz)でディスプレイ側の電力消費を抑えつつ、4nmプロセスで更なる省電力化されたA16 BionicのCPUとGPUを用いて、やはりアニメーション処理の電力も削って実装にこぎ着けている。
確かに何気なく動く黒い領域は普段の生活の中で、ちょうど画面の中に生き物を飼っているように、動いている様子を見ていて楽しいものに仕上がっているが、画面の切り欠きやパンチホールをそうした演出に昇華させたのは、チップレベルのハードウェアとソフトウェア、デザイン、ライフスタイルを包括的に見るアップルらしい実装だと評価することができる。
選びやすさも明確に
今回、iPhone 14は「iPhone 13 Pro」の仕様に近い構成となっている。据え置かれたA15 Bionicチップは5コアGPUが搭載され、また1200万画素メインカメラは大型センサーとセンサーシフト式手ぶれ補正を搭載した。
つまり、昨年のPro仕様が、今年のスタンダードモデルに位置する、というわかりやすいモデル構成になった。1年前に最新だったテクノロジーを手頃な価格で手に入れるという位置づけがわかりやすい。
ただし、iPhone 14にはiPhone 14 Proと同様のPhotonic Engineが搭載されており、センサーは同じでも写真の画質はかなり磨きがかかっていることは、ハンズオンエリアでも確認できる。
そして、iPhone 14 Proは、4nmプロセスとなったA16 Bionicチップを搭載。設計は同じだが微細化が進み消費電力が下がり、高クロックでの駆動が可能になるから性能も上がる。また空いたスペースに、ディスプレイ駆動などを司るDisplay Engineが搭載され、最低1Hz(1秒に1度)の書き換えによる常時点灯ディスプレイなどの新機能と、前述のDynamic Islandなど新しいハードとソフトによるデザインを、いち早く体験できるようになった。
結果的にはスタンダードモデルを1年足踏みさせるかたちにも見えるが、ラインナップ全体からすると「Proの機能が翌年のスタンダード」という法則性が生まれ、選びやすいラインアップになったのではないだろうか。
iPhone 14、iPhone 14 Pro、iPhone 14 Pro Maxは9月16日発売、iPhone 14 Plusのみ遅れて10月7日発売の予定だ。