エッセンシャルツール
スマートフォン市場は飽和状態で、AndoridもしくはiPhoneはシェアを奪い合うことでユーザー人口を増やす方法を模索することになる。iPhoneは端末価格が高く、先進国・新興国ともに追いかける立場だ。
イベントの冒頭、iPhone、Apple Watch、AirPodsの3つの製品を発表することをあらかじめ予告したティム・クックCEO。アップルはこれらの製品を「エッセンシャルツール(生活必需品)」と位置づけていたのが印象的だった。
iPhoneが登場して15年間、スマートフォンは確かに現代の生活における問題解決ツールとして重要なポジションを確立してきたことは疑いがない。特に米国を見ていると、生活インフラとして足りていなかった通信や交通、決済、医療と行った領域の「問題解決ツール」として作用してきた。
今回アップルはスマートフォンに加えて、スマートウォッチとワイヤレスヘッドフォンも生活必需品に位置づけた点は、個人的におもしろさを感じた。
特にApple Watchでは、自動車の衝突事故の検出機能を加えた。またiPhoneは今年度の最も安いモデルにも、衛星通信を用いた緊急通報サービスが等しく搭載された。端末の価格などに左右されず、命を守る機能を惜しみなく投入する姿勢は、同社のスマートフォンを含むエッセンシャルツールの考え方を色濃く反映するものだ。
iPhone 14シリーズにも、同様の配慮がなされている。
iPhone 14、iPhone 14 Plus、iPhone 14 Pro、iPhone 14 Pro Maxの4モデルについては、米国とカナダにおいて、衛星通信を利用した緊急通報に等しく対応する。加えてApple Watchと同様、256Gまで検出できるセンサーを搭載し、自動車の衝突事故の検出もサポートした。
特に衛星通信はProモデルでのみサポートという差別化でもユーザーは納得していたかもしれない。しかし上位モデルに限定せず、すべてのモデルで機能を追加した点は、アップルがiPhoneに対してデザイン、カメラ、機械学習、セキュリティ・プライバシーの次に「安全」という顧客価値を追加しようとしている戦略が透けて見える。