この不穏な状況は、ある意味で今回のアップルの発表にふさわしい空気を作りだしたとも言える。同社が今年アピールした新機能は、災害がより頻繁に起こる世界において、緊急時の備えを意識させるものだ。
799ドルからのiPhone 14の新たな目玉機能の一つは、キャリアの電波が届かないエリアに居るときに、遭難信号を発信できる「衛星経由の緊急SOS(Emergency SOS via Satellite)」だ。この機能は、米国とカナダで利用でき、2年間は無料で提供されるという。フォーブスは、無料期間が終了後の価格をアップルに尋ねたが、現時点で回答は得られていない。
アップルはまた、iPhoneとApple Watchの組み合わせで作動する自動車事故の検出機能を発表した。この機能は、デバイスのジャイロスコープと加速度センサーを活用したもので、ユーザーが事故に巻き込まれたとシステムが判断した場合、10秒のカウントダウン後にユーザーの反応がない場合は緊急通報サービスに電話をかける。
この新機能は、アップルが自社製品を「安全ツール」に位置づけるというマーケティング戦略の転換を意味する。アップルはこれまで、自社のデバイスをクリエイターのための洗練されたツールとしてアピールし、マイクロソフトなどの企業のありふれた製品に対抗してきた。しかし、米国ではAndroidよりもiPhoneを使う人が多くなるにつれ、アップルはもう一つのアピールポイントとして、安心感を売りにするようになった。「iPhoneがある日、あなたの命を救うかもしれないと」と同社は主張する。
アップルは、以前からこのアプローチに乗り出していた。Apple Watchは長年、高齢者を対象としたLife Alertと同様の機能である転倒検出機能を提供しているが、今年は799ドルのタフネスモデルの「Apple Watch Ultra」が加わった。このモデルは、アウトドア活動に役立つ機能を備えているが、それと同時に、事故や自然災害のような状況でサバイブするためのツールとしても活用できる。
これらの新機能はいずれも災害への備えを意識したものだが、アップルがプレゼンの中でカリフォルニアの猛暑について言及することはなかった。2020年のイベントも、カリフォルニアの山火事が猛威を振るい、空が黙示録的なオレンジ色に染まった数日後に開催されたが、アップルはそのことには触れなかった。
(forbes.com 原文)